〜32話〜 ページ33
一番辛いのはお頭だ。
ウタと一緒にいた時間が一番長い。
知っているのだ。
なかなか眠らないウタを連れてナイトマーケットに行ったのも。
ルウさんの目を盗んで2人で冷蔵庫の中身をつまみ食いしてるのも。
全部、全部、私は知っているのだ。
涙が頬を伝いお頭の頬に落ちる。
シャン「A」
「私はウタの姉になれてたでしょうか」
親からの愛情を上手く受けれなかったから人との接し方があまり分からない。
それも歳が下の子はとくに。
シャン「あァ お前はウタの姉として十分やってくれたさ」
お頭の手が頭に乗ると撫でてくれる。
「お頭」
シャン「此処がぽっかり穴が開いた感じだな」
胸の辺りを強く握り締めて言う。
シャツが皺になる。
「はい」
私にはウタの代わりにはなれないけど少しでもお頭の開いた穴を埋められるようにしたい。
そう、心に誓う。
お頭が起き上がるとそのまま肩を押された。
私はベットの上に寝転がってしまうと、お頭も隣に寝転がって来る。
そのまま背後から抱きしめられると肩口に頭が当たる感触がした。
シャン「今日はこのままこうしてていいか」
「はい」
五月蠅い心臓の音が聞こえていないか心配になるが暫くすると寝息が聞こえるので私も眠った。
朝のひんやりとした空気に目を覚ます。
此処がお頭の部屋と忘れて寝返りを打つと眠っているお頭の顔と近くなる。
驚いて声が出そうになるが、唇を噛んで我慢した。
何度か眠っている姿は見た事はあったがこんなに安心しきって眠っているお頭を見るのは初めてで自然と口角が上がる。
お頭の睫毛、若干赤い。
思ってた以上に長い。
そして、黒ひげにつけられた三本傷。
指先をその傷をなぞるように触れる。
皮膚は盛り上がっており、傷の深さを感じさせた。
シャン「そんなこの傷に興味があるのか」
「…い、いえ！！」
触れた事で目を覚ましたお頭の声が聞こえると触れていた手を離し、距離を取ろうとすると腰に腕が周り叶わなかった。
お頭はまだ眠いのか私の胸辺りに顔を埋めてくる。
まるで獅子のようだと思いながら私も再び瞼を降ろした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 629人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アルマジロ
| 作成日時：2022年9月17日 23時
