〜23話〜 ページ24
大きな手が私に近づいてくる。
怖くて目を瞑ってしまう。
なかなか触れる感触がないので目を開けた。
手は止まっている。
自然と私の手はその手に触れていた。
雨で濡れて冷たいはずなのにその手は温かくで優しい温もりを感じる。
「温かい」
伸ばされていた手を自分の方に引き、頬に触れさせる。
あんなに痛かった頭痛はいつのまにか落ち着いていた。
シャン「なァ この村での生活は楽しいか」
「‥‥まだ慣れないですけど楽しいです」
檻の中よりも。
シャン「そうか」
男は私の返事を聞くと、頬から手を離した。
先に立ち上がり手を伸ばすのでその手を掴むと強い力で引っ張られる。
シャン「村には此処を下れば良いのか」
「はい」
手は離されることなく、繋がれたまま足を進める。
顔に降り注ぐ雨粒を、空いた手で拭っていると視界が暗くなった。
大きなマントの中に入ったのだ。
何処かで香った事のある懐かしい香りが鼻に匂った。
シャン「急ごう」
返事の代わりに繋がれた手に少し力を込めた。
もう少しで森を抜ける所で、隣にいた男が視界からいなくなる。
すぐに隣を見ると、男は崖から落ちていた。
飛び降りるか飛び降りないかで迷うはずの頭は機能せず、体は勝手に崖から飛び降りていた。
手を伸ばす。
「お頭！！！！！！手を！！」
今、自分はこの人の事をお頭と呼んだ？
何故と言う疑問と共に闇に包まれた。
シャン「来い」
暗闇にいた私に、光の手を伸ばしてくれたのは赤髪海賊団大頭の赤髪のシャンクスだった。
「お頭！」
シャン「何だ？A」
「今日 ライムさんから1本取りました！」
シャン「そうか 凄いな！」
大きな手が頭を撫でる。
私はこの手が大好きだ。
温かくて優しくて。
自然と目が覚めると、視界一杯にお頭の顔。
2人して地面に倒れていた。
土の付いているお頭の顔に触れると、ゆっくりと瞼が上がる。
お頭と声を出す前に抱きしめられた。
シャン「どうして庇った」
「もう後悔したくないんです」
私が放った言葉に、お頭の肩が跳ねると体が離れた。
「お頭？」
今度は強く、強く抱きしめられる。
苦しいけど嬉しかった。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2022年9月17日 23時
