16話 茅野side ページ18
促されるまま教室に入る。
そこではまだ皆が澪奈のドーピングの件で話し合っていた。
「あ、あの、話って……何」
何となく居心地が悪くなって前に立つ大河さんに話しかける。
「ねぇ。」
ぎゅんっ と効果音が付きそうなほど、勢いよく振り返った大河さんは、鬼のような形相で此方を睨んでいた。
思わず固まる。
「なに悲劇のヒロインぶってんの?」
「え……?」
「ムカつくんだよ!!!」
今まで聞いたことの無い大河さんの怒号。
それまで話していたクラスメイトの皆が一斉に此方を向く。
こんな大河さんは見たことない。
「アンタが澪奈を殺したくせに!!!」
その言葉は私の胸に突き刺さった。
足がガクガク震え、立っていられない。
堪らず座り込むと、今度は大河さんに胸倉を掴まれる。
「私、澪奈の親友だから分かるの。
澪奈ね、私と一緒にいる時も、ずーっとアンタのことばっかり話してた。
私が嫉妬しちゃうくらいにね。
”さくらは優しくて面白い子なんだ”って
”さくらは凄くいい子なんだ”って
言ってたんだよ」
今度は黒板に押し付けられる。
ぐっと力強く押し付けられた背中が痛い。
「アンタは私の次くらいに、澪奈に信頼されてた。
アンタも澪奈のこと、信頼してたんでしょ?!
なのに!!
アンタは澪奈を裏切った!!!
アンタは澪奈を無視した!!!
アンタは!
アンタは、澪奈を……ッ」
大河さんの喉が引き攣る音を聞いた。
大きく見開かれた、宝石みたいな目から
大粒の涙が零れていく。
「友達に裏切られた、澪奈の気持ちが
”茅野さくら” アンタに裏切られた澪奈の気持ちが
わかる………? 想像したこと、ある……?」
頬を伝った涙が、私のネクタイの上に落ちた。
胸倉を掴む手が下ろされ、
大河さんは滑り落ちるように
縋り付くように
私の肩に抱きついた。
「……ねぇ、ッねぇ、ねぇ…!!!
なんで、澪奈のこと裏切ったのよ……
ねぇ、なんでよ………!!!
なんで、よ………ッ」
そのまま大河さんはずるりと地面に膝をついた。
教室には大河さんの啜り泣く声だけが響いている。
誰も何も言わない。
誰も何も言えない。
気まずそうに目を逸らし、
苦しそうに耳を塞ぐ。
私は何も出来ず、大河さんを見つめていた。
その時、
「はい、席ついてー」
ガラリと開けられたドアから先生が入ってきた。
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理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています!応援してます!! (2022年8月23日 17時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね!まさかの共犯になるなんて…!面白いです!更新待ってます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね! (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
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