15話 茅野side ページ17
教室を飛び出してきてしまった。
個室に入り、しっかりと鍵をかける。
どうして回答役は私なんだろう。
皆をまとめる力なんてあるわけないのに……
先生に聞いても分からなかった。
それどころかよく分からない答えが返ってきた。
「茅野は、景山と友達だったよな」
そんなわけない。
私は澪奈の友達じゃない。
澪奈が虐められた時、私は澪奈の味方をしなかった。
そばにいなかった。
皆で無視した。
そんな私に比べたら、大河さんは凄く立派だ。
私にとって大河さんは、澪奈と同じくらいエモい存在だった。
本人は多分気づいてないだろうけれど、大河さんを撮った写真は、澪奈を撮ったものと同じくらい多い。
文化祭だって、少し遠くでやる発表会だって、全国大会だって見に行った。
大河さんの演技力は、本当に凄くて、見る度に感動していた。
澪奈と並ぶ大河さんの写真も、カメラの中には沢山記憶されている。
美女と美女が並び合う姿は、まるで彫刻みたいで。
本当に、美しかった。
本当は沢山話したかった。
友達になりたかった。
澪奈と、大河さんと、私の3人で
一緒に帰りたかった。
水泳の話や、演劇の話を聞きながら。
でもそんな事はもう叶わない。
澪奈は死んでしまった。
大河さんは澪奈の代わりにいじめられるようになった。
大河さんから笑顔は消えた。
笑っているのは、舞台の上だけになった。
手を洗い、鏡に向かう。
鏡の中の私は、頬を濡らしていた。
それを見て、初めて自分が泣いていたのだと気付く。
ハンカチを取り出す。
青色の生地に、デフォルメ化されたてんとう虫が縫い付けられた可愛いハンカチ。
澪奈がプレゼントしてくれたもの。
「澪奈……ｯ」
涙が込み上げてくる。
ハンカチを目頭に押し付けた。
涙を吸い込んで、しっとり濡れていく。
「茅野さん」
突然、声をかけられた。
振り向くとそこには、
「大河…さん」
腕を組んで此方を睨みつける大河さんがいた。
＿＿＿怒っていらっしゃる
頭の中で流れた自分の声は腑抜けた敬語で。
呑気にそんなことを思っている自分が馬鹿らしくなる。
心臓が早鐘のように鳴った。
………怖い
「話したいことがあるの。教室に来て」
そう言うと大河さんは私を後にして歩き出した。
その動きに合わせて、腰まで伸ばされた黒髪が靡く。
柄にもなく綺麗だと思う。
「うっ、うん」
遅れて出た返事は、酷く震えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 656人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月23日 17時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね！まさかの共犯になるなんて…！面白いです！更新待ってます！ (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね！ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
