14話 ページ16
「どうして…茅野さん……」
茅野さんは澪奈の友達だ。
3年になって、部活もいよいよ大詰め。
大会続きになると練習も遅くなるから、私と澪奈は暫く一緒に帰れなかった。
そんな中、茅野さんに出会ったのだという。
澪奈はいつも楽しそうに茅野さんのことを話していた。
私も仲間に加わりたかったけれど、茅野さんと澪奈が帰る時間と、私が帰る時間はどう急いでも合わず、結局話せずじまいだった。
澪奈の話を聞く限り、茅野さんは優しくて面白くて、正義感ある女の子
な筈なのに
「……私は、やってない！」
「澪奈！！」
澪奈はそれだけ言うと教室を飛び出してしまった。
涙を堪えた、必死の叫びだ。
慌てて呼び止め、追いかけようとした足は
クラスメイト達の言葉によって止まってしまう。
「うーわ、逃げたよアイツ」
「ホントなんじゃね？ドーピング疑惑」
「ホントにやったから逃げたんでしょ」
どうして今まで一緒に過ごしてきたクラスメイトを
簡単に裏切ることができるんだろう
心底そう思った。
聞こえてくる澪奈の悪口は、まるで私に向けられているかのように感じた。
胸が、痛かった
「とにかく水泳絡みが自 殺の原因って事で間違いなさそうだな。水泳部の責任って訳だ」
早く話を終わらせたいのか、甲斐君が早口でそうまとめる。
そんなことを言われた水泳部は黙っていない。
「ちょっと待ってよ！私達別に何もやってないし！
…茅野さん、余計なこと言わないでよ」
苛立ちの矛先は当然のように回答役の茅野さんに向けられた。
熊沢さんが茅野さんの顔を遠目に覗き込む。
「ちょっとごめん、トイレ…」
茅野さんはそう言うと小走りに教室を出て行った。
私は心の中で、逃げた と付け加える。
教室は未だに澪奈のドーピング疑惑の件で持ち切りだ。
あぁ、胸糞が悪い。
今ここで、ドーピングだなんだと騒いでる奴らの首を掻っ切ってやってもいいが、
それを監視している人の腕には爆破スイッチ。
リスクとデメリットしかない。
心を落ち着かせようと、深呼吸する。
もしも「ドーピングが原因で、景山澪奈は自 殺した」なんて回答されたら
怒りでどうにかなってしまうかもしれない。
1歩、勝負に出てみようか。
大丈夫、だってまだ十日間もあるんだから。
私は監視カメラをギロリと睨みつけた。
宣戦布告の意味を込めて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 656人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月23日 17時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね！まさかの共犯になるなんて…！面白いです！更新待ってます！ (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね！ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
