イナギャラ〜厨二病っぽい彼女は、あの人の妹でした〜

１５話の氷漬け ページ16

「…瞬木君は以前盗みをして捕まったことがあるそうです」


『…だからこの中で財布を取るとしたら瞬木しかいないって？…馬鹿馬鹿しい理由だな』


「俺はやってない…！」

そんなものはただの先入観であって、疑う根拠にはなれど理由とは言えないだろう。…少なくとも、私はそう思う。

「皆帆くん、君はどう思う？」


「確証が必要だね。現状ではまだ、状況証拠すら存在しない…キミの推理、まだまだ穴だらけだな」


「！どっちの味方なんですか君は！？」



「やめるんだ！試合前だぞ！」

「俺達は代表選手なんだ、みんなの期待を背負ってる！だから恥ずかしくない戦いをして、そして勝たなきゃ！」

「でもですねぇ…」

そういって真名部が、ちらりと私たちの方を一瞥した。



「僕達全員がサッカーをしたくて集まったわけじゃないんですよ」

「「！！」」


「それぞれ条件を出されて、雇われてるだけなんですから」

「ええ！？」

「雇われているだと！？」

…どうやらこの様子だと、雷門の3人だけが知らなかったようだ。



「たとえば鉄角君は、実家が漁師なので壊れた漁船の修理代稼ぎ…野咲さんは、世界最高新体操チームへの海外留学。
井吹君も、海外のバスケットチームへの留学費用ですよね？」

「…あぁ」


当然私も出された条件によって、ここにいる。もちろんそれとは別に、士郎兄さんを超えて、アツヤ兄さんの夢を叶えたいというのも、ある。





「そ、そんな…本当なの？…瞬木！君も、そうなの？」

「…俺は…、弟たちを、大きな家に住まわせてやりたいんだ」

……家族のため。瞬木は、弟思いのいい兄だったのか。


「…ねえ、刹那。君は？」


『……』

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