【d!】忘失 (ページ37)

今日:13 hit、昨日:2 hit、合計:33,552 hit

36話ページ37

.

…………ところで、後ろの方にある気配にロボロさんは気づいているだろうか。

チラリと、こちらの様子をうかがっている者に目を向ければ、目に入ったのは赤いニット帽。

シャオロンだ。

前世、私を郡に誘ってくれた人。

ロボロさんの話が耳に入ってこない。

数秒間、彼を見つめてしまった。

「どうかした…あ、」

ロボロさんが、私の視線の先を辿る。

ロボロさんに見られたことで焦ったのか、シャオロンは後ろにいる誰かを殴る素振りをして、去って行ってしまった。

彼もまた、私のことを覚えていない。

「アイツら…！
話聞かれてなかったよな？」

『この距離じゃ多分…聞こえていないかと』

ロボロさんは私の言葉を聞いてホッとしたような表情を浮かべた後、真剣な顔を私に向けた。

「…………覚えててて貰えんくて、辛いんは俺らも分かる。

けどな、仲間が欠けた世界よりも、記憶は無くとも仲間全員が揃って一緒にいれる世界の方が何倍もマシや。
俺らみんな、そう思っとる」

私は仲間が欠けた世界を過ごしてきたわけじゃない。

1番最初に欠けたのは、私だから。

でも、周りに皆がいない寂しさは私にも分かる。

記憶を失ってしまいたいと思うほどに、1人は辛かった。

『……そうですね。

そろそろ戻りましょうか。
また、一緒にご飯食べましょうね』

「おん。いつでも来てや」

そんな言葉を交わして、私とロボロさんは屋上を後にした。