【d!】忘失 (ページ36)

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35話ページ36

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「あれ？もう来てたん？早いな」

ロボロさんが来たことを確認して、お弁当を取り出す。

私が腰を下ろしている場所の近くに、ロボロさんも近づいてきた。

『ロボロさんが遅いだけじゃないですか？』

「シャオロンに足止めくらったからな」

よっこらせ、とおじさんくさいセリフを吐いて隣に腰を下ろすロボロさん。

ぶら下げたコンビニ袋にはパンが4つ。

食べる量は今でも変わってないようで安心だ。

『相変わらずよく食べますね』

そして、相変わらず少し筋肉質で。

前世でも筋トレ頑張ってましたもんね。

意味わからない筋トレの話してて大半が引いてましたけど。

「ゾムの方が食うで」

『でしょうね』

ロボロさんとゆっくり話が出来る機会は十何年ぶりだろう。

話は自然と今世でのお互いの話になる。

中学生までは子供時代を楽しんでいたということ、高校に入ったら見知った顔が沢山いたこと、相変わらず身長が伸びないこと、そして生徒会でのこと。

やっぱり記憶があるとか無いとか関係なく、彼らといるのは楽しいということ。

『楽しそうですね』

「Aもそれなりに今世は楽しんでるやろ？」

『まぁ、ハイ。
前まで知らなかったものを学べるのは楽しいですし、こんな平和な世界にいれて、幸せだとも思います。

…けど、思い出して貰えないっていうのは、少し心にくるものがあるな、と』

「まぁな。俺らもそれは思っとる。
けど、完全に忘れてるわけや無いと思う。
みんな、何かしら引っかかってる。
俺らが全員初めて会った時も、初めてって感じはせんかった。

多分、記憶は思い出せないけど、体が覚えてる…って言うん？本能？
まあよく分からへんけど、上手くいけば思い出せるんちゃうか。……って、グルッぺんが言っとった。

────そんで、俺らに足りなかった“最後のピース”が揃った｣

そう言ってロボロさんが私を見る。

私が来たことで何かが変わったとでも？

否、違う。

変わる可能性があるかもしれないと、そう言いたいのか。

前世での幹部は揃った。

ここからどう変わるか、どう変えるか……。

『全員が記憶を取り戻すかは分かりません。
…けど、やってみる価値はありそうですね』

「Aならそう言うと思っとったで。
この件についてはおいおい話すわ」

『了解です』

グルッペンさんはどう動く気なんだろう。

それとも、まだ何も考えていないのか。

あの人の考えることは分からないから、指示を待つしかないかな。