【d!】忘失 (ページ4)

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3話ページ4

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もう俺も、高校生になるらしい。

実感なんて無くて、
ああ、時が過ぎるのって早いもんだな
なんて考えてた。

そんな俺を見て同い年の奴らは、｢オッサンみたいだな｣って笑ってたっけ。

自分でも少し思う。
なんで俺はこうも冷めてるんだろう。

疑問に思ったところで分からないからどうしようもないんやけど。

何かが足りない。

ずっとそう思ってて、でもそれが何かは分からない。

何不自由なく生活してきて、金に困ってるわけでもないし、友達がいないとかそういう悩みもない。

充実はしてるはずなのに。
これ以上、何を望んでるわけでもないのに。

───大事な何かを、忘れてる気がする。

俺は、何を忘れてる？

小さい頃にあった夢？ずっと前に無くしたおもちゃのこと？
それとも、そこまで仲がいいわけでもないクラスメイトの誕生日？

……どれも違う。どれもしっくりこない。

何かを忘れてる事は分かるのに、それが何かは分からへん。

でも何故か、先輩らとおる時は、安心感？そんなようなものを感じる。
悩みなんてどうでも良くなってしまう。

あの雰囲気が好きや。

疑問なんは、先輩らと出会ってすぐ。
1番最初に出てきた感情が、“懐かしい”だったこと。
会ったのは、それが初めてだったはずなのに。

あとは、特定の先輩らの話題に、俺の知らない過去の話が出てくることがある。

俺らが話してるとこから少し離れた場所で、数人で小さい声で話してる。

正直言って意味が分からへん。

性格とか行動とかは俺らと変わらへん。
けど、それは俺らの知らない俺らの話。

｢それ、いつの話ですか｣

堪らずそう聞けば、その話をしていた先輩らは困ったように眉を下げて笑った。

そして、その先は答えてはくれへんかった。

知らないはずの話。

なのに、俺は何故かそれを知っているような気がする。

…気持ち悪い。

この感情が、思い出せない何かが気になってモヤモヤする。

もし、何かを忘れているんだとしたら……

それを思い出せたら、スッキリするんやろか。