【d!】忘失 (ページ23)

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22話ページ23

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コネシマさんが屋上を出てから、少し時間を置いて私も階段の方へ向かう。

この屋上へ続く階段は1つ。

告白の場としてよく使われるらしい屋上から、コネシマさんと2人で降りてきたら……。

……確実に勘違いされるだろうから。

変に目立つのはゴメンだ。

そんな事を考えながら、階段を下る。

否。下ろうとした。

人影が目の前に見えて足を止める。

｢シッマと仲ええんや、自分｣

聞いたことのある声。

制服と、前世に着ていたものとそう変わらない緑のパーカーを着ている彼。

ゾムさんだ。

『あぁ……。あの人フレンドリーなんでね。私なんかにも良くしてくれるんですよ』

｢自惚れてるん？｣

『まさか』

｢残念｣

『そちらは？盗み聞きですか？』

｢ちゃうで。シッマが全速力で降りてきたから気になっただけや。

……嘘。ここサボりに丁度ええから｣

ゾムさん…………

トントンさんがぶっ倒れないといいけど……

何をサボってるのかは分からないけど、この人は変わらないなぁ。

いや、そこまで仕事サボってないか。ゾムさんは。

サボってたとしても、前世と比べれば仕事量なんて少ないだろうから、仕事をしているのがトントンさんじゃなかったとしても、倒れる心配はないか。

『そうですか』

早く下に降りたいが、ここの階段は幅が広い訳では無い。

そう、ゾムさんで道が塞がれて通れないのだ。

完全に通れないと言うほど狭くもないが、ゾムさんが通路の真ん中に立っていることで、通れるスペースが狭くなっているのは確か。

通ろうと思えばまあ通れないことは無いのだが……彼が通してくれるかは分からない。

それに、仮にも前世では先輩だったのだ。

あまり失礼な態度はできない。

私が先輩面出来るのはチーノだけ。

ショッピ君は同期だからね。

｢んー、なんやろ。君と俺、会ったことあるっけ？｣

『無いですね』

即答。

ゾムさんはそんな私に少し驚きつつも、｢せやんな｣なんて言って考え込んでいる。

今世でゾムさんと会ったのは初めてだ。

……私のことを、思い出しかけていたり……？

淡い期待。

そうだったら良い。思い出してくれればいいのに。

……そんなに上手く世界が回らないことは、私もよく知っているけど。

｢…………分からへん！
なあ、名前教えてくれん？｣

『……A。AAですよ』

｢んー……
やっぱ知らんわ｣

ですよね。

……やっぱり、こんな簡単なことで私を思い出すわけ、ないですよね。