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「見ツケタ!カァー!」
鎹烏に頼んでから数分もしないうちに、彼は私の元へ戻ってきてそう言った。
「ずいぶん早かったですね」
鎹烏の頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めながら、彼は報告を続けた。
「大通リノ団子屋ノ前デ随分焦ッテ探シテタ。“ソコニ留マッテイロ”ト伝エテ、戻ッテキタ」
「そうですか、ありがとうございました。藤の家紋の家に戻っていてください」
「了解、カァー!」
鎹烏は空高くへ飛んで行った。私は約束の刻限が近づいていることに気付いて、「ちょうどいいタイミングだ」と思いながら、懐中時計屋さんの前へ向かった。
________
「どうだったァ」
「どうやらお団子屋さんの前にいるようです。鎹烏が調べてくれました」
「かすがいがらす…?」
「私のお友達ですよ。彼がその場にとどまるよう言ってくれたそうですが、いつまで待ってくれるかわからないので急ぎましょう」
「そうだなァ。千裡、行くぞォ」
風柱様は、千裡と手を繋いで歩き出した。千裡が「Aお姉さんも…」と手を差し出してきたので、私も顔を綻ばせながら手を繋ぐ。
千裡のお姉さんの行方を掴めたことで心に余裕が生まれたのか、今日二度目のこの光景が、なんとも尊いものだと、私は気づいた。
鬼狩りの私と風柱様が、小さな子供と手を繋いで、“普通の日”を過ごしている。
これは異常で、奇妙で、特別な瞬間なのだ。
(もう夕日は沈みかけている。千裡を送り届けたら、そろそろ帰らなくては)
生きて、日常に戻れる。
それがとても寂しく思えてしまうのだから、私は本当に、欲張りだと思う。
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ゆうきりさ(プロフ) - Mashiro Lioさん» Mashiro Lioさん、ご指摘・コメントありがとうございます!きっと作者だけでは気づかなかったので本当にありがとうございました!最終決戦、私自身も書くのが楽しみで仕方ないです!待っていてくださいね! (2020年9月25日 22時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 指摘失礼いたします。88話にて、雫波紋突きは伍ノ型ではなく漆ノ型ではないでしょうか。柱稽古なので、ああそろそろ最終決戦だ……!とドキドキしながら読んでいます。作者様が最終決戦をどのように描くかが、とても楽しみです……。ご無理のないよう頑張ってください! (2020年9月24日 22時) (レス) id: 97626e8ffb (このIDを非表示/違反報告)
ゆうきりさ(プロフ) - 鮭大根さん» 鮭大根さん、コメントありがとうございます!面白いと思って頂けてすごくうれしいです!更新待っていてください!!コメントもらった作者頑張ります!←メッチャうれしいんです笑!! (2020年9月13日 16時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
鮭大根(プロフ) - ウェーイ( ・∇・)面白いです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!!続き楽しみ〜(´-ω-`)ムフフ (2020年9月13日 9時) (レス) id: ef1af2de4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうきりさ x他1人 | 作成日時:2020年9月2日 18時