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A:…くじらやイルカに会いたい。大きな海で自由に泳ぐ、大きなくじらやイルカ…。

F64:明日、小樽水族館に行こうか?イルカショーやっているよ。

A:絶対に嫌っ!行きたくない!

F64:どうして?イルカに会えるよ?平日だから人混みではないと思うけど?

A:水族館のイルカさんは、自由じゃないもん!そんなの嫌っ!


そうだった。Aは、犬が仕事…盲導犬をするのも嫌がっていた。イルカが人間に管理されてショーをしている事が許せないんだろう。だとしたら、動物園や動物と触れ合える店も、本当は苦手だったのかな。
…Aの事、本当に知らない事が多い。Aの事、もっと知りたいな…。


ゆっくりとAの頭を撫でて落ち着かせる。海にいるくじらやイルカには、北海道で会える場所はあるのかな…。


F64:シーズンオフに見られる場所があるなら、Aが見えるようになったら一緒に行こう?日本じゃなくてもいいから、連れて行く。約束しよう。


僕はAの手を取り、小指同士を絡める。指切りげんまん、嘘ついたら針千本…ってやつだけど、そこは歌わない。『見えるようになったら』という、叶うかわからない事を言ってしまった…。


F64:A。ほかにもやりたい事、僕に教えて?

A:…思いっきりボールを投げたい…。ファーストピッチやって、あんなに歓声もらって…恥ずかしかったけど、楽しかった。
 だから…、ゆうやさんみたいに上手にできないけれど、ちゃんとした野球をやりたい…。守備も攻撃も、走る事も…。
 

『ちゃんとした野球をやりたい』Aの口から聴けたのは、見えるようになった時の願い。
…僕が札幌に一度帰って、鎌ヶ谷に戻った後から様子がおかしかったのは、ファーストピッチの後で考えるようになったコレを叶えるためには、ロサンゼルスに行く必要がある。それをずっと考えていたのかな。


F64:一緒に練習しよう。Aは、僕よりきっと上手になる。ファーストピッチの球は、2週間の練習であれができるなんてすごいと思った。Aは頑張り屋さんだから、僕ももっと頑張らないといけない。
 結衣さんにロサンゼルスに行く決断の理由を聞かれたら、これを答えにするといいかな。

A:…野球をやりたい?

F64:そ。結衣さんに迷惑をかけたくないって伝えるよりも、ずっといい。
 Aがやりたい事を見つけて、それを叶えるために、何をすればいいかを考えて決めたって。
 

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作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年9月16日 4時

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