夏祭り*ヨコハマ左馬刻1 ページ6
Side左馬刻
人ごみが嫌いだ。
ジロジロ見られるのだって腹が立つし、うるせぇ場所には1秒もいたくない。
だから居酒屋もクラブも足を踏み入れたことはねぇ。
ましてや祭りなんて最悪だ。
…そう、思ってたのに…。
「左馬刻さん!」
タバコの煙を吐き出しながら振り向くと、Aが小走りに駆けてくるところだった。
「待たせてしまってすみません!準備に時間かかっちゃって!」
「別に待っちゃいねぇよ。」
「ほんとですか?」
「っ…あぁ。」
一瞬言葉につまりかかったのを何とか誤魔化して、Aの視線から逃げるように目をそらした。
落ち着け、俺。普段通り振舞うんだ。
「慣れねぇモン着て走るんじゃねぇよコケてケガでもしたらどうすんだばぁろう。」
煙と一緒に出た言葉は自分でも驚くほど早口で…
っくそ!吸ったところでタバコの味なんかわかりゃしねぇ!
チラリ、と横目で視線を送ればやっぱりそこには浴衣を着たAがいる。
襟もとからのぞく白いうなじ、腰から足元にかけてのなだらかなライン。
洋服より肌の露出は少ないはずなのに醸し出す色気は倍どころの話じゃねぇってどういうことだ?
意識すればする程自分の心臓が大きく脈打つのが手に取るようにわかる。
Aが浴衣を着ている。
たったそれだけでこんなに心臓が痛くなるなんて、クソポリ公に知られたら一生笑われること間違いなしだ。
「せっかくお祭りだから浴衣着ようと思って…でも、自分で着付けしたから帯とか変になっちゃいました。せっかく左馬刻さんと一緒にお祭りに行けるのに…ごめんなさい。」
「あ?何で謝るんだ?」
「だって、左馬刻さんと一緒にいる時はいつもちゃんとしてたいから。左馬刻さんの隣を歩くのに恥ずかしくない自分でいたいんです。」
「…バカが。」
「っ?!」
うつむいていた顎をすくって上を向かせると、小さな唇に触れるだけのキスを落とした。
「左馬っ…?!こ、ここお祭り会場ですよ?!」
「あぁ、そうだな。」
「そうだなって…誰かに見られたらどうするんですか?!」
「見てぇ奴にはいくらでも見せてやれ。」
「そういう問題じゃ、っ?!」
今度はたっぷり5秒その温もりを味わって、仕上げにぺろりと唇を舐めてやった。
「っは…いい顔。」
耳まで真っ赤にして浅い呼吸を繰り返すAに支配欲が満たされていく。
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☆kon☆(プロフ) - 蒲公英さん» コメントありがとうございました!ときめいていただけて嬉しいです(^^)左馬刻様は多くを語らず愛を伝えてくれると思いこんな感じになりました!よかったら、今後もご覧ください(o^^o) (2021年10月5日 22時) (レス) id: 3782f3d41e (このIDを非表示/違反報告)
蒲公英(プロフ) - 色っぽくて、夢主ちゃんを想う優しい心にもドキドキして…とってもときめきました!!夏のうだるような熱い空気のなか、二人を包む甘い世界が素敵でたまりません!ありがとうございます!! (2021年8月28日 20時) (レス) id: 82e4cd4c6f (このIDを非表示/違反報告)
☆kon☆(プロフ) - 白虎・白狐さん» コメントありがとうございます!感想いただけてとても嬉しいです(*^^*)今後もゆっくりですが更新していきたいと思いますので、ぜひご覧ください! (2021年8月26日 23時) (レス) id: 3782f3d41e (このIDを非表示/違反報告)
白虎・白狐 - konさん、初コメント失礼します!とても良い作品でした!これからもがんばってください!応援しています! (2021年8月24日 23時) (レス) id: b80ffe6913 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kon | 作成日時:2021年8月1日 14時