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「はい、千寿郎お口開けてごらん。あーん」
「……Aさん、自分で食べます…!」
千寿郎にお粥を食べさせてあげようとすれば、自分で食べると言われた。お風呂一緒に入る?と聞くと、首を横に振られる。添い寝してあげようか?と聞くと、ついに「大丈夫ですから!!」と大きな声で言われた。
「千寿郎、兄が一緒に風呂に入ってやろう!」
「……は、はい……」
「なにこの差は」
がっくりと落ち込みながら、居間に戻る。
真っ黒になっているさつまいもの甘煮を一つ口の中に入れて、思わぬ味に吐き出してしまった。
まっずい!!と叫ぶように言って、ハァとため息をこぼした。味付けは大丈夫なはずなのに、何がいけないんだ。
「A、お茶を持ってきた!」
「……杏寿郎」
「どうした?」
ちゃぶ台にお茶を二つ置いた彼は優しくそう聞いてくる。聞くも何もきっとわかっているでしょうに。まともにご飯も作れなければ、千寿郎のお世話もできない。私はこの家の厄介者ではないんだろうかと時折思ってしまう。
「私の料理の腕は相当酷いみたい…。今日気づいた」
「そうか、それは良かった!」
「杏寿郎の正直なところ好きなんだけど、流石にもう少しオブラートに包んで欲しいな」
ゴンゴンゴンと頭を机にぶつける。振動が湯飲みに伝わり、お茶が何度も揺れる。赤くなった額が痛い。目を閉じてはハァ〜〜!!と大きなため息をした。
頭に乗った温かい手が、ヨシヨシとまるで子供をあやすかのように撫でられる。彼にとって私はきっといつまでも小さな妹のような存在なんだろうか。
いい加減に顔を上げる。
目の前の杏寿郎は、私が作った黒いさつまいもを箸でつまみ口に運んでいた。「どうせまずいんだし食べなくていいよ」と器を取り上げる。杏寿郎は器を掴む私の手の上から触れて「いいや、俺が食べよう」と引き寄せた。
「流石に全部食べたら今後の鬼殺に支障をきたすよ」
「君が、俺のために作ってくれたものだろう。まずいが、Aの真心がこもっている!」
そりゃあそうだよ。杏寿郎がいるからさつまいもの料理を作ろうとした。こんな有様になったけど、食べてくれるのが嬉しかった。
「………ありがとう、杏寿郎」
「(これは照れているのだな)」
ほんのちょっと照れ臭くて、両手で口元を覆った。
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (5月8日 17時) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時