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その日の夜、明日Aと久方ぶりに出かけるのがつい楽しみでなかなか寝付けなかった。筆と便箋を自室の机に出し、筆を走らせる。
「(よもや、これを書いていると知られたら、Aはどう思うだろうか)」
鬼殺隊の剣士のほとんどが遺書を書く。
明日に補償がないからだ。任務先で鬼にやられ死ぬことは多い。
封筒に「佐倉A」と彼女の名前を書き添えた。彼女に遺す文を書くのはもう何度目になるだろうか。定期的に、彼女に伝えたい内容が変わっていく。全てはAの幸せを願ってのことだ。
じっとAの名前を見つめていると、千寿郎の声が襖の向こうから聞こえてきた。
「兄上、入っても構いませんか?」
「うむ、少し待ってくれ。……………よし、いいぞ」
彼女への手紙を隊服の中にしまい終え、千寿郎に許可を出す。千寿郎は中に入ってくると「い、一緒に寝ても構いませんか?」と照れて見せた。
「愛い!!!」
「あ、兄上……」
よもやよもや、弟が可愛い。
枕を片手に部屋に入ってきた千寿郎は、机に置かれた箱を見て「Aさんにですか?」と的確についてきた。
その包みを手に取り、「そうだ」と教える。
中身は彼女には秘密だぞ、と小さく呟き教えると、千寿郎は「きっと喜びますよ」と笑顔を浮かべて見せた。
「Aに結婚を申し込んだ時、特に何も用意してなかったからな。他の柱に聞いたところ、女性にこれを送ると喜ぶと聞いてな」
「きっとAさんは、兄上が贈るもの全て喜びますよ」
「そうだろうか」
包みを机の上に戻し、布団の中に千寿郎を招き入れる。こうして二人兄弟で寝るのはいつぶりだろうか。
幼い頃はよくこうして二人で寝ていた。
時折Aが泊りに来ては三人で。
「Aさんが本当の姉上になるのが楽しみです」
「あぁ、そうだな」
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るる - 読んでる途中に目から水が、、、、、、、、 とってもいい作品でした!!!!!! (7月25日 14時) (レス) @page50 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして!涙なしに観れませんでした… (2021年9月26日 18時) (レス) @page50 id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12758号(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます…!一話目から引き込まれて全て読みました、鼻水まで出してみっともない泣き顔で読んでしまいました…笑笑映画でもボロ泣きしましたがこれでも号泣してしまいました、素敵な話が読めて良かったです。本当にありがとうございます! (2020年11月23日 19時) (レス) id: 3be706ff9b (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 初めまして!このお話を深夜に見かけ一気に読みました。映画でも泣きましたが、このお話も号泣でした。素敵なお話ありがとうございます。何度でも読んでしまいそうです。 (2020年11月23日 2時) (レス) id: b7bf575f91 (このIDを非表示/違反報告)
raaaaaaam(プロフ) - 初めまして!私も一気に読み、深夜なのに号泣笑 隣に寝てる子供が起きるぐらい泣いてしまいました笑 煉獄さん、、最高!素敵な夢を見させて下さりありがとうございます(T_T) (2020年11月20日 4時) (レス) id: c6906907ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年10月26日 20時