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それはどうやら隼人を親戚に預けようと願っている趣旨の文だった。先日、風門が「隼人を親戚に預けたい」と言っていたことから行動はしていたのだと悟る。だが、これに書かれていることがその結果とも言える。
文を握ったまま、顔を俯かせているソイツにどう声をかけるべきか。そして、畳の上に黒い染みが出来ていく。
「………オイ」
泣いている。
声をかければ、彼女は俺を見てハッとし涙を拭う。「ど、どうしたんですか」と涙混じりの声に、無言で見つめる。
「ま、また隼人が勝手に呼んだんですか?ごめんなさい、いつも……」
「隼人と何かあったのかァ?」
「別に何もないですよ?」
何もないというツラではない。
姉想いの強い隼人があんなことを叫んで出ていくんだ。何かあったのは間違いない。
他人である俺が口出しすることではねぇけれど、お前だって俺に踏み込んできやがった。だから、俺が踏み込んでも文句は言うなよ。
「お前、隼人を親戚に預けようとしてたのかァ?」
「……………っ」
「まあ見るからに、そりゃァ隼人には内緒にしてたんだろ。そんでバレたってとこかィ」
床に落ちている文を一枚一枚手にとり、まとめると風門にほらよと渡す。受け取った風門はその文をぐしゃりと握りしめて、「……私といるより、親戚のお屋敷にいた方が安全で幸せになってくれるって……思ったのに……っ」と震え出した。
風門に背中を向けて縁側に座ると、「俺と同じで不器用な愛しか与えられねぇんだろうなァ」と呟いた。大切に思っているからこそ、最愛の弟の幸せを願う。
だが、それは遠回りし、大切な弟を傷つけているとも知らずに。
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呑子(プロフ) - 2話のひなき様がひなぎ様になってます (2020年6月11日 21時) (レス) id: b937ad49b1 (このIDを非表示/違反報告)
菜一郎(プロフ) - きゃああああ名前で呼んで欲しいってとこ可愛すぎぃぃいいいい (2020年5月29日 17時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花(プロフ) - ぐはっ!告白ぅぅぅ!!尊い!!!死ぬ!!!! (2020年5月25日 23時) (レス) id: c8a359bcaf (このIDを非表示/違反報告)
Ø(プロフ) - こんなに素敵な小説に出会えてよかったです!大変かもしれないですが無理せずがんばってください!応援させていただきます!! (2020年5月21日 0時) (レス) id: 712c3e0bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハチハチ1129(プロフ) - 美桜さんの作品最高です!私も逮捕されたい、補導されたいと思いました(*^ω^*) (2020年5月19日 6時) (レス) id: 12ce184d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年5月16日 13時