俺の継子に呆れた件について【不死川実弥】

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「ーーーもう師範のこと、信頼できないです」



俺によく懐いているAがそんなことを言うのは初めてで。俺の頭は収集が間に合わない。そして目に映ったAの手に握られた文。それを取り上げる。


文の中にはコイツの兄貴のことがたくさん書いてあった。胡蝶が帰り際にボヤいた「Aさんってお兄さんがいたんですか？」の言葉を思い出す。まさか、知ったのか。自分の兄貴が生きていることを。



「おい、A」

「どうして、どうしてですか。私が弱いから、信用できないから黙っていたんですか？こんな大事なこと。私は無力ですか？」

「何言ってやがる」

「私はあの時一人になったと思ってました。けど、一人じゃなかった。お兄ちゃんは生きている。なのに、どうして」



俺がお前を信用してないといつ言ったんだ。それにお前は無力じゃねぇ。俺の継子なんだから強いに決まってるだろうが。全てお前を悲しませねぇようにしたはずなのに、どうしてこうなっちまった。


我を忘れているAに手を伸ばすもすぐに振り払われ、Aが立ち上がる。



「もういいです」

「は？」

「私は私自身で兄を探します」

「待て！お前、状況分かってんのか！！てめぇの兄貴はもう、」

「それでも私のお兄ちゃんなんです！！！！」



俺の言葉を遮ってそう叫んだAは俺を一度も見ずに、居間を出て行き、Aの手をつかみ損ねた俺の腕は空気を掴み、寂しげに揺れ落ちた。


そしてその日、Aは屋敷を出て行った。



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