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「実弥さん、実弥さん」
俺の名前を呼び、笑顔を浮かべてくる水城。
彼女は最近俺が教えてゲームアプリで遊びながら「この人倒せないんです」とスマホを渡してくる。自分の力で倒さねぇと意味がねぇだろと思いながらも、スマホを受け取り倒してやる。
倒してやったあと、恐らくまた強い相手が出てきて悪戦苦闘すんだろうなァと思いながら目の前の水城を眺めた。案の定「手強い」とぼやき始めた。
「実弥さんは、」
「その"実弥さん"ってやめねぇか?」
「え」
動かしていた指を止め俺をみる水城が固まった。
匡近もよく顔に出すことが多いが、コイツもそうだ。泣きそうな顔をしてやがる。
決して名前で呼ぶなって言っているんじゃない。そう付け加えるためにも、口を開いて「堅苦しいからよ」と改めて言った。
「"実弥"でいいぜ」
「……あ、……なんだぁ……、馴れ馴れしく名前で呼ぶなって言われたのかと……思いました……」
安堵の表情に「なんなら敬語も外していいけど」と伝えた。顔を手で覆っていた彼女は、両手を広げて「良いんですか?」と様子を伺った。
「…………さね、み」
「お、おう」
心臓がむず痒い。
頬を染めて「実弥」ともう一度はっきりというもんだからこちらまで気恥ずかしくなっちまう。そんな俺を見てか、何度も「実弥」と呼んでくるソイツに「もういいだろ」と頭をわしゃわしゃと掻き乱してやった。
そうすれば前髪があちらこちらに広がって、水城はあぁもう!と声をあげる。その前髪に触れて綺麗に整えてやる。
「私だけ実弥って呼ぶのはフェアじゃない、……だから私のこともちゃんと呼んでほしい」
「………は?」
「だって、未だに実弥、私のこと"お前"か"てめぇ"ってしか呼ばないだもん」
言われては見ればそうだ。
妹たちの名前しか呼んで来なかったから、女の名前を呼ぶことにそこまで慣れていない。目の前で不満そうに俺を見る彼女に、笑った。
「よく気付いたなァ」
「気づきますよ!私は会った頃からずっと名前で呼んでるのに……」
「…………A」
これで満足かィ?と頬杖をついて眺める。
水城…いや、Aは嬉しそうに頬を緩めて「また一歩近づけた」と顔を赤く染めて行った。
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青子(プロフ) - もう、切なくて胸が痛いです…更新楽しみにしています!!よろしくお願いします!! (2021年1月24日 9時) (レス) id: 32fb39756e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めーこさん» コメントありがとうございます!そうだったんですね、、出してからちょっとしたころに勝手に消えちゃって再上げしたんです、、また出会ってくれてありがとうございます、、まだ続く予定なので最後までご愛読お願いします! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 菜一郎さん» コメントありがとうございます!映画館のくだり〜!ありがとうございます!!キュンとくるようなエピソードこれからも入れるよう試行錯誤練ってみます!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - *カフェオレさん» コメントありがとうございます!単純なのでそう言ってもらえてうれしいです、私も好きです!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
めーこ(プロフ) - 初めまして!初コメです!以前読んでて突然消えてからずーーーーっと気になっててまた出会えたことに感謝感激雨あられです!更新頑張ってください!陰ながら応援してます!! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 2c11b94916 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年1月14日 18時