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警察学校を卒業して早3年の月日。
警察業務に漸く慣れ、めんどくさくはあるが尊敬する先輩の扱いもだいぶんお手の物になっていた。
5つ離れた玄弥は今も大学生活を送り、毎日楽しそうに過ごしている。俺と年の離れたまだ小さな弟や妹たちもまた楽しそうに学校生活を送っていた。
夜勤明け、玄弥と二人暮らしをしているアパートに帰る。仮眠を取る暇がなかったため、頭がチカチカとし立っていても寝れそうだった。
玄関の鍵穴に鍵を差し込み、鍵を開けるがかかっていなかったのか鍵の開いた音はしなかった。すんなりと開く扉に、また玄弥の奴は鍵を閉め忘れたんだなとため息を吐いた。中に入った途端賑わう声に玄弥の部屋を見やる。
「玄弥、ここわかる?」
「わかんねぇ」
大学で仲良くなった友達でも連れてきているのかいくつかの声が聞こえてくる。向かい側の俺の部屋に入ろうとしていると、玄弥が部屋から顔を出して「あ、兄ちゃんおかえり」と声をかけた。
ただいまァと返して、部屋に入ると適当に鞄を机に、そして上着をクローゼットの中に仕舞う。夜勤明けの体は重すぎる。だが、玄弥の楽しそうに笑う顔を見ると疲れは吹っ飛ぶもんだ。
茶でも飲むかと立ち上がり、キッチンに向かう。
キッチンに入ると髪の長い女が冷蔵庫の前で何やら睨めっこをしていた。
「何やってんだ」
そう声をかけてみると、大きく体を揺らした女がこちらを振り返る。あ、と零した彼女は立ち上がり「お邪魔しています」と頭を下げた。
「玄弥の、お兄さんですか?」
「あぁ」
「よく似てますね、目元そっくりですね」
俺を見上げてそう言う女にどうかしたかと冷蔵庫と睨めっこしていた理由を聞く。彼女は「お茶が二種類あるんです」と冷蔵庫の中の茶を指さす。
茶が二種類あるのは、俺と玄弥で飲む茶の種類が違うからだ。玉露入りの茶とほうじ茶。玄弥はこっちなァと手を伸ばした。
「ありがとうございます。あの、騒がしかったら言ってください」
ぺこりと頭を下げて、人数分のコップを持つと足速にキッチンを去って行った。今時の女子はああいうタイプの奴もいるのか、良い子だなと思いながら食器棚を開けた。
「……………玄弥の奴、俺のおはぎ食いやがったな」
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青子(プロフ) - もう、切なくて胸が痛いです…更新楽しみにしています!!よろしくお願いします!! (2021年1月24日 9時) (レス) id: 32fb39756e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めーこさん» コメントありがとうございます!そうだったんですね、、出してからちょっとしたころに勝手に消えちゃって再上げしたんです、、また出会ってくれてありがとうございます、、まだ続く予定なので最後までご愛読お願いします! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 菜一郎さん» コメントありがとうございます!映画館のくだり〜!ありがとうございます!!キュンとくるようなエピソードこれからも入れるよう試行錯誤練ってみます!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - *カフェオレさん» コメントありがとうございます!単純なのでそう言ってもらえてうれしいです、私も好きです!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
めーこ(プロフ) - 初めまして!初コメです!以前読んでて突然消えてからずーーーーっと気になっててまた出会えたことに感謝感激雨あられです!更新頑張ってください!陰ながら応援してます!! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 2c11b94916 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年1月14日 18時