緋 色 の 君 .【神威】

緋君28 ページ29

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「ねぇ、神威は団長の仕事しないの？」

「うん」



師団の団長であるはずの彼は、日中仕事を全くせずにのんびりとしていた。仕事のことを尋ねても彼はにへらとどうでもいいと言わんばかりに笑っていた。


どうやら彼に回ってくるはずの仕事の9割は阿伏兎が引き受けているそうだ。寝る時間もない彼に同情しよう。それなのに神威はさぞかし優雅に彼の部屋のソファーに寝転んでは何やら少年漫画を読んでいた。


なんだか二人の姿を見ていると、お兄ちゃんと土方さんのように見える。立場は逆だけど、そん感じがした。



「ていうか君いつまでここにいるつもり？」

「だから、Aだってば」

「はいはい、A」



名前で呼ばれただけで胸が動かされる。
あぁ、自分もだいぶん落ちてしまったものだなと思いながら「神威が私を好きになるまで」と言ってやる。ハァとジト目でため息を吐いた神威は「なら、好きだよ、はい」と棒読みでそう告げた。


棒読みで感情もない「好き」を頂いてもこれっぽっちも嬉しくない。もういいと怒った素振りを見せて、仕事をしている阿伏兎に近づいた。「何か手伝いましょうか」そう声をかけると、彼は私を見て涙目になった。



「え"っ、」

「初めて手伝ってくれる奴が現れた…」

「そんな涙目になることじゃ…」



それほど彼は団長からもほかの平団員からも手伝ってもらったことがないようだ。これじゃァいつか時間外労働などで神威は訴えられるんじゃないだろうか。


「ここにいさせてもらう代わりと言ってはのんですけどね」とタダ住まいさせてもらう代わりに少しでも役に立ちたい。



「お兄ちゃんの分手伝ったりしてたから慣れてますし」

「ありがとよ」



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