17 ページ17
*
昔よく施設を抜け出してカクちゃんと三人でやってきた河川敷。場所は違えど、河川敷を見るといつも思いだす。
視界が明るくなり、顔を上げればいつものようにポーカーフェイスのイザナ。唇を噛み締めるけれど、涙は止まらなかった。
イザナの手を振り払い、そのまま方向転換。
左の方へひたすら歩いていけば「おい！」とイザナの声。なりふり構わず川の中へと足を踏み入れる。
お母さんが生きていたら、こんなことにはならなかった。何が昔みたいな優しいお父さんに戻ってくれる、だ。全て期待だけで終わってるのに、いつまで経っても期待して。
「(お母さんに会いたい……っ)」
膝の辺りまで入れば、川の流れに足を取られてしまい歩くにも歩きづらくなる。それでも、歩いた。手首を掴まれて、「てめぇ何やってんだよ」と引っ張られるが根気強く歩みを進める。
「離して！！死なせて。死なせてよ！！！」
「……このクソ下.僕！！！」
「きゃっ！」
思いっきり引き寄せられる。イザナは私を担ぐように抱えると川から出た。荒く私を草むらの上に落とすイザナ。人一人殺しそうな目で私を睨んでくる。
「勝手に死んでんじゃねぇぞ」
「………だって、」
二度、お父さんに捨てられた。
あの日、お父さんが施設に私を迎えにきてくれた時すごくすごく嬉しかった。なのに、お父さんにまた捨てられた。
「お父さんは私のこと必要としてくれない……っ！！」
イザナはその場に腰を下ろすと、私と視線を合わせる。この目、この目だよ。苦手なの。見つめないで、私をその瞳に映さないでよ。
イザナは手を伸ばし私の首を掴んだ。力を入れるイザナに、私の呼吸はどんどん奪われていく。イザナの手に触れてもがくけれど離してはくれなかった。
「じゃあ俺がお前を殺してやる」
「………やだっ………離し、て………っ、……イザナぁっ」
「死にてぇんだろ？」
.
『ーーーA』
.
「……なぁ、A」
その声に、必死に言葉を振り絞る。それが本音だったのか、ただの命乞いだったのか、……多分前者の方。
「……死にたく、……ないっ……！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 461人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頭ン中お花畑(プロフ) - とっても甘々で最高でした。ニマニマが止まらないし、本当に胸がキュンキュンするーっ！ 最高のイザナ夢をありがとうございました。寿命が伸びた気がします (1月7日 23時) (
レス) id: 67d18bea8c (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 天竺編10月始まる楽しみ今からイザナ見るの待ちきれらない (6月21日 0時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - イザナの名言天竺編で見れるの楽しみです。 (6月12日 1時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - ↓ごめんなさい 間違えました (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - あ (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美桜
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時：2022年11月13日 16時
