28 ページ28
*
猫みてぇな女だ。
再会したばかりの頃は猫の威嚇のように俺たちたちを見て関わらないようにしていたくせに。一歩踏み入ると、昔みてぇにすぐに笑って、「イザナ」と何度も俺の名前を呼んでくる。
数年と会っていなかったが、いつ聞いてもソイツの声は心地よい。父親の元に帰り、元気に暮らしているかと思えば、くそ親父だったようだ。
一時的に佐野家に連れて帰り、真一郎たちに頭を下げればすげぇびっくりされた。何がつったら、やっぱ俺が女を連れてきたってことだろうか。一番驚いていたのは妹のエマか。根掘り葉掘りと目を輝かせ聞いてくる。
「なあ、イザナ」
「なに?」
「お前、Aちゃんのことどう思ってるんだ?」
「は、」
真一郎の質問に顔を歪ませる。
「俺のモノ」。自分の所有物の如く、周りの人間を扱っていた。Aもその一人だった。
あの日、父親に「いらない」と言われ、死のうとしていたA。絶望感というのは俺も味わったことがあるから気持ちはなんとなく汲み取っていた。
けれど、父親に再度見放されたAを見て、これでようやく俺のモノになるんだと思ったなんて言ったら、真一郎たちは俺をやべぇ人間だと感じるんだろう。
「Aちゃんは女の子なんだ。いつまでもお前と一緒にいるなんて保証はない。あの子に好きな子が出来たら、お前どうすんの?」
「殺す以外の選択肢あると思ってんのかよ」
「いやいや、真面目な話でな。つーか、お前のそれただの独占欲だろ」
Aは俺のモノ。施設で交わした話なんてアイツと再会するまではすっかりと忘れていた。アイツの父親がAを施設まで迎えに来た時だった。嬉しそうにしていた反面、施設から離れるのが名残惜しそうだった姿を思い出す。
『覚えててね、イザナ。私、イザナやカクちゃんと離れてても、イザナのこと大好きだから!』
俺なんかよりもひと回り小さな手で繋いできやがって、離したくなかったのに簡単に離れて行ってしまった。
「独占欲じゃねぇよ、アイツが俺に笑いかけるから……」
「だから?」
「…………。真一郎、お前、俺に何を言わせてぇんだよ」
Aが俺に笑い、そして名前を何度も呼んでくるから。いつからか、アイツが俺の色に染まれば良いななんて、らしくもなく思っちまったんだよ。
.
461人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頭ン中お花畑(プロフ) - とっても甘々で最高でした。ニマニマが止まらないし、本当に胸がキュンキュンするーっ! 最高のイザナ夢をありがとうございました。寿命が伸びた気がします (1月7日 23時) (レス) id: 67d18bea8c (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 天竺編10月始まる楽しみ今からイザナ見るの待ちきれらない (6月21日 0時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - イザナの名言天竺編で見れるの楽しみです。 (6月12日 1時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - ↓ごめんなさい 間違えました (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - あ (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2022年11月13日 16時