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わりと地味な印象を放つ彼は、典型的な隠れイケメンらしい(友人情報)。
確かに顔は整っているし、背は高いしスラッとしているし、それは認める。
しかし私は、たまに廊下ですれ違うコイツに、嫌いとまではいかなくともあまり良い印象を持っていない。
根っからの真面目気質である守沢は、提出物や忘れ物、陰口などを許さないタイプらしい。
つまり、関わりたくないめんどくさい。
本当に2年間他クラスで良かった。
「勘違いしてるかもしれないけど、私が鬼村に見つかりたくなかっただけだから。お礼とかいらないから」
「待て、ちゃんと『鬼村先生』と敬称を付けるべきだぞ」
そこかよ、と思わず心の中で突っ込んでしまう。
見てるだけで痛くなるような顔のキズよりも、私が鬼村を呼び捨てにしたのを注意するほうが優先とは。
私はため息をついて彼の方へ向き直る。
「分かった。鬼村先生に見つかって巻き込まれたくなかっただけ。だから、気にしないで」
「しかし……!」
眉を寄せて反発する彼は、何言いかけて口ごもってしまった。
もごもごと、何か言いたそうにしては少し頬を赤らめ、悲しそうに顔をゆがめ、悔しそうな表情を見せる……なんなんだコイツ。
「何? 用がないなら教室戻るけど」
「た、助けてくれたことには変わりない!!」
本当に帰るつもりだった私を引き止めるように、かなりの大きな声でそんなことを叫ばれ、私の心臓は途端に跳ね上がった。
勢いよく守沢の口を押さえ、バッと振り返る。
「うるさい! なんのためにこんな面倒事に首突っ込んだと思ってんの! 鬼村にバレる!!」
「ん、んんんっ!」
どうやら草むしりを終えて職員玄関のほうへ向かったようでひと安心する。
口に当てていた手を離すと、守沢はその整った顔に曇りを入れた。
そうか、つまり、女子に助けられたことを悔やんでいるわけか。そういうことをいかにも気にしそうだし。
「……過ぎたことだから。罪悪感とか無力感とかあるなら、私の提出物いっこ見逃して」
「それは無理だな」
「そっか、ありがとう、お礼は受け取ったから」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ぱしっと手を掴まれ、ついに我慢の限界だった。
「うるさいな! ほっとい………」
そこまで口にして、私は言葉を詰まらせることとなる。学校中に鳴り響く鐘の音が聞こえたからだ。
「…………す、すまない……」
「……」
_____こうして、私と守沢は出会ったのだった。
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りつ@鉛筆 #アダマリLOVE(プロフ) - 急に失礼します癖に刺さりました。 (2022年8月29日 20時) (レス) @page10 id: 6f6f2e1e89 (このIDを非表示/違反報告)
雪月詠 - 急にすみません大好きです() (2022年7月8日 19時) (レス) @page10 id: ec1ca7135a (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 急にすいません好きです() (2022年7月4日 18時) (レス) @page10 id: 6e1901c539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とわね | 作成日時:2022年6月27日 1時