孤独に寄る少女ともの好き→その三 (ページ6)

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第百六話ページ6

それからしばらく二人とも黙ったままだった。

しかし実際はほとんど時間は経っていないが。

先に口を開いたのは私だった。

でも独り言のように呟くように言った。

「私はここにいていいのかな」

「もちろん」

彼はちゃんと聞きとって答えてくれた。

だから賭けてみた。

実際には半分くらい自暴自棄になっていたのかもしれない。

彼の言うとおりいろいろあって疲れていたため

少し楽になりたかったのかもしれない。

だから言った、聞いた。

顔を上げて、

まっすぐに彼の目を見て。

「私が、あなたのことを好きと言っても？」

彼は驚いているように見えた。

私はこれ以上は何も言わなかった。

でも視線は逸らさなかった。

彼の返答を待つ。

間もなく彼が口を開いた。

全てをやさしく受け止めてくれるような、そんなやさしい表情で

私の頬をやさしくなでながら言った。

「もちろん。

僕もAのことが好きだよ」

そしてさっきより強く私を抱きしめた。

不思議なことにまた涙があふれてきた。

また胸が苦しくなった。

でも今回は安心感があった。

自分がうれし泣きしているのだとわかった。

彼が言う。

「好きだよ、A。

もう泣かないで。

もうひとりで抱え込まないで。

きみひとりで苦しんでいると僕も苦しいから」

「違う、今は…、今はたぶんうれしいから」

「そっか、よかった」

安堵したような声色で言った。

それから私が泣きやむのを待ってから彼が聞いてきた。

「落ち着いた？」

「うん」

「ふふ、眠そうだね」

「ん、少し」

「部屋でもうやすむ？」

「そうする」

「わかった。

おやすみ」

私は立ち上がりその場を離れようとすると、

あ、そうだ、と彼に引きとめられた。

「今度は勝手に出ていかないよね」

「……行かないわよ」

少しむっとして言った。

よかった、と笑って言う彼を後にして

部屋へ行ったはいいものの、

エーフィにあーだこーだとからかわれ、

そして今までを振り返った。

ホウエンに帰ってきて短い期間の間に多くの出来事があった。

自分はずいぶん変わったと思う。

そのせいで苦しんだこともあったけれど

孤独が最良の選択ではないことがわかった。

独りでないことに気づかせてくれた。

「ありがとう」

何に感謝したのかわからなかったけれど自然に言葉が出た。

明日は何が起こるだろうか。

～Fin～