孤独に寄る少女ともの好き→その三 (ページ5)

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第百五話ページ5

彼は黙って私の言葉を待っているようだった。

何か言わなければ。

少し空気が重くなったように感じる。

とりあえず苦し紛れに言葉を発する。

「なんとなく、よ」

「なんとなく…ね」

納得できない、といった表情をしている。

ちょっと怒っているようにも見える。

どうして怒っているの…？

わからない。

わからないことだらけだ。

私はこの状況に今怯えのようなものを感じている。

今までにはないことだった。

いろんなことが起こって混乱している。

彼はまだ私の言葉を待っている。

私は言葉を絞り出すように、なるべく平常心を保つように装って言った。

「なんで、ダイゴがムキになるのよ。

私はあなたの娯楽や癒しのためのおもちゃでも人形でもないわ。

私はあなたのモノじゃないのだから自分の人生をどうしようとしたって

直接あなたに迷惑がかからなければいいじゃない」

最後の方は少し涙声っぽくなった。

加えて顔を膝にうずめながら言ったので

最後の方ほど何を言ってるかわからなかったかもしれない。

涙が少し流れたのがわかった。

「A」

名前を呼ばれたのが聞こえてすぐ

両頬に手が触れるのを感じ、そして顔を上げられる。

顔を向けられた先には彼が困った顔をしており

指で私の涙をすくいながら言った。

「そういうつもりで言ってるんじゃないんだけど…。

攻めてるような言い方になってしまったのかな、ごめん」

なぜだかわからないけれどさらに涙があふれてきた。

彼は私の頭をなでて

それから肩をひいてやさしく抱きしめた。

視界が暗くなる。

しかし不思議とさっき感じていた怯えなど負の感情は消えていった。

彼は右手で私の頭をなでている。

なでられる度に気持ちが落ち着いていくが

それに反比例するかのように胸が苦しくなる。

彼への気持ちが膨れる。

彼が口を開く。

「いろいろあって疲れたね。

もう今日はおやすみ」

彼の左手が私の体から離れる。

私の頭に手を置いたまま顔を覗き込む。

「A」

一瞬目が合ったが、やさしい目だった。

見ていられなくて目を逸らす。

この場から逃げたかったけれど

なぜか再び自分から彼の胸に戻る。

自分でも行動の意味がわからなかった。

「A？」

彼にとっても予想外の行動だったらしく問いかける。

しかし私が黙っていると

彼はまた黙って頭をなでてくれた。