第九十五話 ページ45
ちょうどここにきて今日で一週間。
もうだいたい書きとめる作業は終わりに近づいてきた。
この作業が終わったら今度は私に何をさせる気だろか。
手首がそろそろ腱鞘炎で悲鳴上げそう。
もとから書く作業って好きじゃないのよ。
肩こりもなるし目も疲れるし。
いいことなんてひとつもないわね。
あ、人間と関わる必要がないっていうメリットはあったか。
でも採算あわないなぁ。
少し作業をやめて伸びをする。
首や肩のあたりから関節のずれる音がする。
『少し休憩？』
「さすがにね、飽きるし」
『そんなのとっくに、でしょ』
「まあね」
エーフィはずっと私のそばにいてくれている。
本当は居心地が悪くて仕方がないのに。
やさしい子。
『それにしてもあの女、
私のAなんだと思っているのかしら。
Aはあんたの侍女でもなんでもないのに！
あんな脅し方、卑怯よ』
私の代わりにたくさんの文句を言ってくれるし。
『私やっぱり変だと思うわ。
Aに直接関係ないのにあんな卑怯な脅しに屈するなんて。
今からでもいいじゃない、ここを出ましょうよ』
「いいのよ、エーフィ。
これは私が選んだことなんだから。
気に入らないのならあなたはここを出ていいのよ。
私は大丈夫だから。
久々にブラッキーと出かけてきたらどう？」
エーフィは黙って私を見る。
会話が途切れた。
脅し。
確かに私には直接関係のないことだった。
無視してしまうことだってできた。
けれどもなんとなくできなかった。
彼がこの事実を知ったらまた怒るだろうか。
また自己犠牲にして、って。
私は鼻で自分を笑う。
ありえない。
だってもう彼には会わない、会えないのだから。
胸が少し痛くなった。
エーフィはこれが好きという感情なのだという。
こんなにもつらいことなのならばこんな感情はいらない。
だってもう私には必要のないものだから。
持ってもどうしようもないものだから。
そもそも感情なんて必要ないのではないかと、
そう思わせるのがこの家の呪いみたいなものなのかもしれない。
でもそれでこの感情が消えるというのならば
その呪いを受けてもいいかもしれないと思う。
「A様、よろしいでしょうか」
侍女がふすまの向こうで私を呼ぶ。
「お嬢様がお呼びです」
私は立ち上がった。
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猫好き - 親父いいいい！婚約の雰囲気あざーーっす！ (2018年12月25日 11時) (
レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
白黒龍 - 私は1です。続きが気になります。 (2017年8月10日 11時) (レス) id: c6354e9b33 (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ(プロフ) - 私は1かな…続きが気になって…！ (2017年8月8日 0時) (レス) id: 69ba82f80a (このIDを非表示/違反報告)
アユミ(プロフ) - 私は、１で、続きがとても気になるのでまだ続けてほしいです。 (2017年8月6日 20時) (レス) id: d27fc7ca9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃々 | 作成日時：2017年5月6日 21時
