(238)【第五層】退避 ページ5
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リーテンたちの咄嗟の行動は間違っていないが、残念ながら通常攻撃では掴み攻撃を解除させられない。
恐らく一定以上の威力があるソードスキルが必要なのだが、あの狭いスペースで複数人が闇雲に大技を発動させれば、集団するべき同士討ちが発生してしまう。
誰に、どう指示するべきか━。
焼き切れんばかりに脳を回転させる私の両目に、突然電光のような感覚が生まれた。静かに開かれた真紅の瞳と視線がぶつかったのだ。
ヒット。この混乱状態でただ一人静かに立ち、私が何かを伝えるのを待っている。
15メートル離れている相棒に、私は最小の単語で指示した。
リゼ「腕に、ラウンド!!」
一瞬のタイムラグもなくヒットが頷き、すでに抜いていたフォックス・ロアー(短剣)を構えた。
深い踏み込みから、ソードスキル《ラウンド・アクセル》を発動させる。腕を攻撃しつつあったリーテンとハフナーを追い抜き、超高速の二連突きを黒い腕に命中させる。
眩いライトエフェクトが迸ると同時に、天井からさっきも聞いた咆哮が降り注いだ。拳が開き、シヴァタとローバッカを解放する。10メートルの高さから落下する2人をリーテンとハフナーがかろうじて受け止める。
さすがにノーダメージとはいかず、四人のHPが微減したが、それよりも防具を壊されずに解放できたことのほうが大きい。
ほっと息を吐きたくなるが、まだまだ緊迫状態は続いている。空振りした腕と足はすでに引っ込み、階段のすぐそばに立つネズハの足元と、その近くにいるオコタンとナイジャンの上空に、新たなターゲットサークルが出現しつつある。
アルゴ「もう退避は無理ダ!」
私の隣でアルゴが叫んだ。
その判断は恐らく正しい。床のラインは、外周部が最も隙間が大きく、階段に近づくほど密になっている。全員がラインを踏まずに階段を降りるのは、もう不可能。
リゼ「みんな、最寄りの壁際まで走れ!!」
最大音量のシャウトで指示すると一秒と経たないうちに全員がダッシュし始めた。直後、階段のそばのサークルから手が突き出し、その近くを二つの足が激しく踏みつける。
リゼ「壁まで行ったら、床のラインを踏まないように止まって!!」
全員が、やや時間差をつけて動きを止めていく。
息を詰めながら、私は床と天井を交互に凝視した。ターゲットサークルは、出ないー。
とりあえず、十二人全員がラインを避けて停止し、念願のインターバルを作ることに成功した。この時間を無駄にはできない。
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りりか@(プロフ) - 星猫さん» ありがとうございます! (2021年1月4日 20時) (レス) id: 94b1bb8aaf (このIDを非表示/違反報告)
りりか@(プロフ) - ミリアさん» ありがとうございます!頂きます! (2021年1月4日 20時) (レス) id: 94b1bb8aaf (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 続編おめでとうございます!今年もコロナも気を付けて頑張って下さいね!無理しないで下さいね。コメントですけど、暖かいシチューどうぞ。(優しい笑顔) (2021年1月4日 16時) (レス) id: e8a27bc902 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 続編おめでとうございます!! (2021年1月4日 16時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
りりか@(プロフ) - 雪華さん» ありがとうございます! (2021年1月4日 15時) (レス) id: 94b1bb8aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりか@ | 作者ホームページ:http naru1
作成日時:2021年1月4日 12時