標的260 不安定な精神 ページ22
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「…ハァッハァッ、また…あの夢だ…っ!」
私は夜、悪夢にうなされ目が覚めた。
「…ハァッ…ハァッハァッ…。」
「んん…A…。」
隣で眠っていたベルは私を抱き寄せ、なだめるように頭を撫でた。
「ハァッ…ハァッ…ベル…。」
「…どーした?また怖い夢?」
「んっ…ハァ…両親と…リーダーの夢…。」
ベルは少し離れると、私と目線を合わせた。
「…そっか。お前、自分の名前言ってみ?」
「…え?自分の…名前?」
「ん。」
「…霧裂、A。」
「しし、わかってんじゃん。あいつらが呼んでんのは別の名前だろ?」
そうだ、リーダーも両親も、私のことは未だLilyと呼ぶ。
「お前はもうあいつらに縛られることはない。Lilyは捨てたんだろ。」
「そう…そうだね。うん。Aは、大丈夫。Aは、大丈夫。」
私は言い聞かせるようにして自分の名前を連呼した。
「……。」
「そっか、だいたい、そうだ。白蘭の言ってた話も嘘かもしんないし。大丈夫だよね。うん。」
「…そうだぜ。あんな奴らの話、まともに聞き入れんな。とりあえず落ち着いたなら眠れ。俺が側にいるから。」
「うん。ありがとうベル。おやすみなさい。」
私はベルの胸に顔を埋めるようにして眠った。
「…こりゃ相当やられてんな…。」
寝息を立て始めた私を見つめ、ベルは一人呟いていた。
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「ん…あれ…おはよう、ベル。」
「ししっ、おはよ寝坊助さんっ。」
私は目が覚めると時計を見た。
「もう昼過ぎなんだ…。」
ベルは寝起きじゃない感じからすると、起きてからもずっと側にいてくれていたみたいだ。
「んん〜…よいしょ。」
私は伸びをしながら体を起こす。
すると突然、ベルが私の頰を拭った。
「ん?何?」
「涙。」
「あ…知らない内に泣いちゃってたんだ…。」
よく見るとベルの袖は結構湿っていて、沢山涙を拭っていてくれた跡があった。
「しししっ、なぁA。気分転換でもしようぜ。」
「気分転換?でも、明日が白蘭との決戦なんでしょ?Aも何か修業した方がいいと思うんだけど。」
「お前はそのままでも十分つえーって。」
「いや、実際幻騎士とかに負けてたし。」
「んーなの相手のマグレだって。いいから行くぞ。」
「い、いや…え、ちょっと…ベル?」
私はとりあえず着替えなどを済ますと、ベルに連れられ外に出た。
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作者名:もちゅろ | 作成日時:2019年5月17日 11時