5話 ページ6
.
あれから結局雨は止まなくて、
ダンデさんとキバナさんは緊急の打ち合わせに呼ばれてしまい。
ポケモンセンターからカフェに場所を移して
私たちは暖かい飲み物を頂くことにした。
店員「とういうことで、ポケモン勝負に勝ったら
あまーいスイーツを無料でつけますぞ!」
ユウリ「スイーツ…!」
ホップ「はい!俺やる!」
店員「はっはっは、元気いっぱいでいいなぁ。
そちらのお嬢ちゃんは?」
「あー…」
トレイにホットココアを乗せたAちゃんは
店員さんの呼び止めにどこか気まずそうに振り返った。
「私、いま手持ちのポケモンとかいなくて…」
店員「え、ほんとうかい?」
「なので、スイーツはその子たちに」
ふふ、と大人びた笑み。
他のお客さんも見惚れてしまっているみたいだ。
一緒にいると忘れちゃうけど、
この滲み出る芸能人オーラすごい…。
トレイの上にあるのはあまーいココアだけど。
ホップ「さ、勝負だ!負けないぞっ!」
.
「やー2人とも強くなったねぇ」
私たちのお皿に乗った分厚いホットケーキを見比べて
嬉しそうに褒めてくれるAちゃん。
ホップは「当たり前だぞ!ライバルだからな!」なんて
ちんぷんかんぷんな回答。
苦笑いしたAちゃんは近くを通ったピッピに気づくと
軽く頭を撫でてにっこり笑った。
ピッピもとても嬉しそう。
ユウリ「聞いていいのかわからないんだけど…」
「ん?」
ユウリ「Aちゃんってポケモン
捕まえないのに理由があったりするの…?」
「んー…」
ユウリ「言いたくなければ、全然…!」
ホップ「俺も聞きたかったぞ!」
ホットケーキを頬張ったホップが前のめりで賛同する。
遠慮ないなぁ?なんて、軽く小突いたAちゃん。
「昔ね、私にも相棒たちがいたんだ」
ユウリ「昔…?」
「色々あって、みんなと離れ離れになったの」
昔、色々。
含みがありそうな言葉の羅列は
「これ以上深く聞くな」という線が張ってあるようで。
さすがのホップも何か聞くことも無く。
Aちゃんは気遣うようにニコッと笑って
席から立ち上がってしまった。
「このあと約束があるから、先に行くね」
呆然と見送るしかない私たちは、
お茶代ぜんぶいつの間にか彼女が払ってくれていたことに
その時は全く気づくことが出来なかった。
.
7人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:曙ぼあ | 作成日時:2023年9月11日 21時