18歩、 ページ23
川西side
暫しの沈黙を破り先に口を開いたのはAの方で、嗚呼。きっと悪い話なのだろうと、何となく感じた。
そんな彼女に意地悪したくなって、ついこのままで話そうと言ってしまった。不思議そうな顔した彼女が口にする言葉を恐る恐る待つ。
少しの時間が空き、放たれた羅列は俺が考えてたこととは正反対の言葉だった。
A「ねぇ。……太一は、まだ私のこと……好きですか?」
その言い方からしてやはり悪い話だったのだろうかと思ったが、一瞬で彼女は俺の考えを否定した。
A「私………私ね、まだ……太一の事が好き。約1年半だっけ、な。その間話すことがなくても、会うことができなくても、太一以外考えられなかった。」
A「だから、だから……やり直したい…な。」
と、少しだけ不安そうな顔で。それでもいつものAのように振舞おうとしていた。
___言葉が出なかった。
____________
Aside
やっと、やっとだ。
やっと言えた。言葉として成した。
漸くここまで辿り着いたのだ。
所々の紆余曲折を経て、やっと。
もう一度、曖昧な関係をキツく結び直す為の言の葉。
断られたら断られたで、もう引きずらないって決めたから。
流れる様な沈黙。
その間太一は、不安そうな顔をしたり悲しそうな顔をしたりと、兎に角浮かばれない様な表情をしていた。
そして、重たそうな口を開いて。
川「……な、んで……??」
と、乾いた笑みで。
え?何で、って。
それは私の台詞だよ、太一。
というか、さっきからずっと不安そうな顔してるのは、何でなの?何で、そんなに歪めてるのか私には分からないよ。
A『……っ何でも何も、私達って付き合ってるんじゃないの?ただ、曖昧になってただけで…』
そう零すと太一の細めの目が大きく開かれた。
よく見ると彼のその目は薄くだが膜が張られていて泣く寸前であることが見てとれた。
太一は口をはくはくとさせ、やがて重たそうにした口を開いた。
川「……っなんでって…確かに俺もまだ好きだし、なんなら毎日こっちに来て欲しいって思ってる。
でもさ、俺は、1度お前を置いて行っちゃったんだよ。それはA自身がよく分かってるだろ?……だから。」
やっと理解した、俺がAと釣り合ってないんだって。
と、乾いた笑みのまま。
はぁ?
A『……ばっかじゃないの!!!!』
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作者名:水菜 | 作成日時:2022年12月11日 16時