17歩、 ページ22
川西side
一瞬意味がわからなかった。
『……………………は、』
なんでだ？なんで？？
だって、だって、アイツは隣の県で普通に高校生活してるはずなのに。
彼女の声にレギュラー全員がこちらを振り向く。
目を見開いて脳がフリーズしてる者もいれば、ジトーと何が言いたげな目をしてる奴もいる。
そりゃそうだ。徹底的に恋バナという恋バナから目を背けていたし、恋人なんていない、なんてはぐらかしていた奴にこんな可愛い彼女がいるだなんて考えもしないだろうな。
思ったより冷静な自分がいたことに驚くが、やはり彼女が俺の視界に映っていることだけは中々信じきれない。
そして、何も言わず行動せずの俺を不思議に思ったのか、もう一度Aから名前を呼ばれていた。
少しだけ怖く感じてしまったのは何故だろう。
恐る恐るAに近寄る。1歩1歩着実に。
10m。
7m。
3m…
2m…
1m。
そして、Aが目の前まで来る。
なんとなく彼女のオーラか何かを感じ取って、これが夢ではなく現実で、彼女がちゃんと生きていることが証明された。
嗚呼本当に。
泣きそうになるのをぐっと堪え、じっとこちらを見ながら微笑んでいるAのことを見つめる。
何十秒、いや、何百秒かもしれない。
お互いにずっと無言だった。
あっちがどんな企みを企てているのかは分からないが、如何せんこっちも何を言うべきか分からないのだ。
いや、言いたいことが多すぎて何を最初に口にすべきか分からない。
ようやく言葉が纏まり、口に出そうとしたときだ。
彼女が先に口を開いた。
A「ねぇ、太一。」
_________________________
Aside
何度も自分に言い聞かせて、ようやく1歩を踏み出せたのだ。
何回もシュミレーションして、言うべき言葉を何度も選択してきた。
きっと、きっと大丈夫なはず。
いざ失敗しだって、友達がすぐ外で待ってくれてるんだ。
あ、でも今はお買い物に行っているかもね。
さぁ言おう。太一が何かを言い出してしまう前に。
A『ねぇ、太一。』
でもその前に移動しなくちゃ。
A『あ、でも待って、話す前に移動しなく川「いや、このままで平気だよ。」え？？』
え、なんで？？
私が何言うかなんて分からないはずなのに。
というか、なんで、なんでそんなに悲しそうな顔浮かべてるの？？
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作者名：水菜 | 作成日時：2022年12月11日 16時
