【HQ】 I'm dying to meet you. ｢川西太一｣ (ページ17)

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-1 〜過去編〜ページ17

川西side
ｰ中学入学式ｰ

待ちに待った中学入学式

とは言え無かったし、正直ずっと暇を持て余していた。

入学生が名を呼ばれ、次々と色とりどりな声が返事を成して行く。

そんな中でも俺は、ボーッと前の人の髪の毛を見ていた。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿ある人の声が耳に触れるまでは。

俺のクラスの隣の最前列。その、右から3番目。

聴こえた名は和泉夜 A。

あまりにも綺麗だった。

声なのに眩しいとすら感じる程

他の生徒の声は、ぼやりと曖昧に通り抜けていくような音だったのに、彼女の声だけは。

耳にしっかりと、けれども優しく柔く包んで離さなかった。

＿＿＿＿＿＿何かが芽生える感覚がした。

＿＿＿＿＿＿＿
ｰ数週間後ｰ

そしてあっという間に時間は過ぎ、ゴールデンウィークを明けていた。

あれからは和泉夜さんとは何も無い。

いやまぁ、こっちが一方的に知ってるだけだし…当たり前なんだけども。

あの後チラッと顔を見てみて分かった事だが、その包容力の感じる声とは裏腹に目鼻立ちが整っていて、しかし一つ一つのパーツが可愛い感じの……所謂高嶺の花ってやつだ。

彼女が纏う雰囲気も気高き泉のように洗練されていて、どことなく近寄り難い感じがした。

でも見れば見る程、見なければ見ないほどにこの胸は高ぶっている。段々とスピードが加速するこの鼓動に気づけないほど鈍くはない。

入学式のあの日。俺は、彼女に恋をしたのだ。

まさか、あちらもこちらを意識していることなど微塵も気づかずに。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
Aside
ｰ中学入学式前ｰ

会場に向かう途中で迷ってしまい、いつの間にか通路からはみ出てしまったようで。

校舎と校舎とを繋ぐ中庭にはハナモモの小さな並木道が出来ていた。

今回ばかりは方向音痴に感謝しなければ。
でも、どうやって戻ろうか。

しかし、そんな思考を停止させるほどに

＿＿＿＿＿＿＿＿＿私は目の前の光景に目を奪われていた。

ハナモモ達の華やかさには似合わない、高身長の生徒が樹木に体を預けて立っていた。

身長の割に全体的にほっそりした体つきのその男。

しかし胸ポケットに入学生が貰う札を付けていたので、そこで同学年であることに気づいた。

横顔が綺麗だった、ただ、それだけ。

それだけだった筈なのに。