ep63 「勝利の裏腹に」 ページ22
(フレイside)
『……』
僕たちは今、調査兵団に入るための演説会が始まるのを待っている。
「ジャン！」
すると僕たちのほうにジャンが歩いてきた。
『……ジャンは、さ……どうして突然調査兵団になろうと決めたの？』
「………」
＿＿＿それは、奪還作戦が成功した2日後。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿
あまりにも残酷な光景だった。
『……っ……』
この日は、戦場に残ったままの死体や痕を処理する作業だった。
……あの日、犠牲となった命は数えきれないほど多かった。
あちらこちらに無残な死骸が散らばっていて、その死骸には蠅が無数に集まっている。
酷いのものでは内臓が飛び出てたり、皮膚が溶けて骨が見えていたりした。
…先輩によれば巨人には消化器官がなく、人を食べてお腹いっぱいになれば吐き出してしまうらしい。
『うっ……お、えっ……っ……』
あまりにも悲惨すぎて僕には耐えれなかった。
同時に涙も溢れ出た。
「新兵、慣れないなら休め。…いや、こんなの慣れるわけないだろうけどな……」
『い、いえ……大丈夫、です……っ……』
必死に死体を集めて処理していると、立ち尽くしているジャンを見かけた。
『ジャン、どうしたの、そんなに立ち尽くして＿＿＿＿』
声をかけきる前に、その光景は目に入った。
いや、目に入ってしまった。
受けとめたくない、光景が。
『……マ、ルコ………？』
そこには、体の半分が無くなって倒れている戦友がいた。
*
その夜。僕たちは途方に暮れていた。
……無駄、だったのかな……全部……
兵站行進、馬術、格闘術、兵法講義、技巧術、立体機動……
あんなに死ぬ気で頑張ったのに……
…マルコだけじゃない、他の皆も……
作戦が成功した裏腹に、とてつもない犠牲があった。
そんなの、分かってるんだ。
ギルアが教えてくれたんだ。この世界には犠牲も要るって。
でも、だからといってこんなの……
『こんなの……って……酷すぎるよ……っ！』
受け止めなきゃいけないのは分かってる。
でも、どうしても受け止めれない。
涙が止まらない。
周囲は静寂に包まれていた。
そんな中。
「……おい、お前ら……所属兵科は何にするか……決めたか？」
『………』
「オレは決めたぞ……オレは……」
ジャンは震える手を握り締めて、こういった。
「…調査兵団になる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆうぺぺ - とても面白いし好きです！夢主の設定すごく好きですｯｯ！体調に気おつけながら更新頑張ってくださいｯｯｯｯ！！ (2020年12月10日 20時) (
レス) id: cad7fa7d96 (このIDを非表示/違反報告)
mikё(プロフ) - 名前をトリガーにしていたらep50が面白いことになりました (2019年7月7日 16時) (レス) id: 325129a848 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 地味に続いてる感じ？ (2018年12月9日 21時) (レス) id: 21ac21fda6 (このIDを非表示/違反報告)
すま(プロフ) - コロンさん» 返事が遅くなりました、コメントありがとうございます！不定期更新ですが温かい目で見て頂ければ幸いです。 (2017年10月14日 22時) (レス) id: 9f09c1f5da (このIDを非表示/違反報告)
コロン - 面白いです。更新頑張ってください。 (2017年9月13日 0時) (レス) id: ce8d4fe5fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すま | 作成日時：2017年5月28日 20時
