木槿のふたり (ページ12)

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弾む会話ページ12

「Aはさ、色んなコンサート見てきた訳じゃん」
「はい、一応」
「どのコンサートが1番衝撃だった？」

缶ビールをちびり、ちびりと飲みながら、考える。
衝撃かあ…。

でも何が1番衝撃って、そりゃ今私が「嵐の松本潤」と飲んでいるってことだよ！！ねえ？お母さん？！

だって、「正人がAって呼んでるから、聞き慣れちゃって。俺もそう呼んでいい？」なんて言われてごらんよ？？？衝撃でしょ？？

「おーい、A？」
「あっ、はい」
「もう酔っ払ったのか～？」

先輩からの呼びかけで連れ戻された。
あぶないあぶない。

「ビールひと缶では酔えませんよ」
「だよな」
「A、結構強いんだ？」
「介抱役になることは多いかもしれません…ってそれは良くて、衝撃受けたコンサート、ですよね？」

そこからは、もう。
「マイケル・ジャクソンのあのコンサートが」とか、「スクリーンと音のズレについて」とか、「最新テクノロジーの話」とか、もうそれはそれはエンドレスで色んな話をお互いにして。

「いやぁ…色々面白い話が聞けたわ」
「私もです、勉強になりました」
「またちょっとさ…」

「あー！やっと終わってる！もう5時だよ、始発走ってるから帰るぞー」
かなり酔い気味の先輩がトイレからタイミングよく帰ってきた。

「先輩、タクシーじゃなくて大丈夫ですか？」
「いや、多分タクシーのが良いと思うよ」

「ですよね、私送ってから帰ります」
「ひとりで大丈夫？」
「介抱役、慣れてるので」

松本さんは、「そっか、じゃあ気をつけて」と、タクシーを呼び、先輩を運ぶのを手伝ってくれた。

こうして、出勤初日は怒涛のように過ぎていった。