ハロウィーンは悪いことを連れて来る-2 ページ9
10月31日、ハロウィーン当日。
Aは夕食を、普段の倍以上は食べた。グラタン、パイ、タルト、とにかく目につく限りのものを、腹に入る限りいっぱい食べた。まあ彼女の場合、普段が食べなさ過ぎなのだが。
夕食の時間が終わると、珍しくテンション高めに、Aは大広間を出た。とは言えテンションが高いのは彼女だけではなく、皆が口々に雑談しながら歩いている。
しかしその賑やかな集団の足は唐突に止まり、喧騒も消えた。
「(何だろう、みんなどうしたんだ？)」
集団のかなり後方にいたAには原因が分からず、人波を縫うようにすり抜けて前のほうへ行き、そして目に入ったその光景に息を呑んだ。
「(これは………一体、何がどうなって…！？)」
松明の腕木に尻尾を絡ませてぶら下がり、カッと目を見開いたまま、石みたいに硬直したミセス・ノリスが、そこにはいた。そんなショッキングな現実のさらに向こう側には、ハリーとロン、ハーマイオニー。3人とも、恐怖と混乱と困惑に満ちた表情を浮かべている。
Aの口の中は最早、せっかくのハロウィーンディナーの味を、全く記憶していなかった。彼女はミセス・ノリスをしばらく見つめた後、静かに視線を壁に移した。壁には、血で文字が書かれていた。
「＜秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気を付けよ＞」
Aはゆっくりと、誰にも聞こえない程小さな声で、それを読んだ。ハリーたちを罵るフィルチの声も、ドラコがハリーを挑発する声も、彼女の耳には入っていなかった。彼女は呆然と、けれど妙にハッキリした意識で、メッセージを眺めた。
「(秘密の部屋とは何でどこにあるのか、継承者とは何で誰が継承者なのか、誰が敵なのか)」
『分からない』が、いっぱいある。そのことに、知識欲旺盛なAは、密かに歓喜していた。
分からない、分からない、分からない。分からないから面白い、知りたい。この沢山の謎を、不思議を、解明したい。
ああ、目の前に疑問が存在するとは、何と素晴らしいことか！
「……………興味深い」
彼女は、小さな小さな声で一言、そう呟いた。またしても誰にも聞こえない程の小声は、今度は２名の教員には、聞こえていた。
2名の内の1人、スネイプ先生は、思わずAを見て、ゾッとした。
彼女の目に浮かぶのは、ただ純粋に好奇心に満ち溢れて、故に危ういものだった。自分の興味のためなら手段を選ばず闇にすら足を踏み入れかねない、そういう目を、彼女はしていたのである。
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☆りんりん♪(プロフ) - 鯉天さん» ありがとうございます！最近忙しさがヤバイですが、更新がんばります！ (2018年8月15日 0時) (
レス) id: bbc438c362 (このIDを非表示/違反報告)
鯉天(プロフ) - 前作も読みました！更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2018年8月14日 17時) (レス) id: 4ca258a6ba (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 賢者の石も読ませてもらいました。とても面白いです！続きがとても気になります。 (2016年9月7日 0時) (レス) id: f2e1a1e1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆りんりん♪ | 作成日時：2016年9月6日 22時
