パンドラの箱は開いた ページ26
何も無かった。何も無かった。何も、無かった。
彼女に都合の悪いことは、何も無かった。だから安心していた。
目を背けるでもなく現実逃避でもなく、自分には無関係のことだと、彼女は本気で信じていた。
「トコハ、朝よ！起きて！」
凄まじく眠い中、ハーマイオニーに元気に叩き起こされる休日の朝。クィディッチの試合が待っているのだ。
眠いまだ寝たい勝手に行けと全身で訴えるAをスルーし、布団を引き剥がす。哀れ、安住の地を失った低血圧少女は、諦めて動き始めた。
地を這うテンションで朝食を摂り、ハリーが箒を取りに行くのに付き合っていたとき。
ハリーが、悲鳴を上げた。
「あの声だ！また聞こえた！」
声の発生源を探し、忙しなくあちこちを見回すハリー。ロンとハーマイオニーには何も聞こえない。
一方のAは、ハリーの言う「声」が聞こえてはいたものの、それが自分以外では彼にしか聞こえていなかったことは初めて知り、密かに驚いた。彼女は、こんなのは全員に聞こえているのだろうと、普通に考えていた。
ハリーとロンが「聞こえる」「聞こえない」の問答をしていると、ハーマイオニーがハッとしたように額に手を当てた。
「私、たったいま、思いついたことがあるの！図書室に行かなくちゃ！」
彼女はそのまま踵を返し、図書館へゴー。
「え、待って、わたしも本読みたい」
Aはここぞとばかりにハーマイオニーを追いかけた。クィディッチと読書では、圧倒的に読書が勝利するのである。
ハーマイオニーは走っていたのに対し、そんな元気など持ち合わせないAは、ゆっくりと歩いた。
階段も終わりに差し掛かると、ハーマイオニーの声が少し聞こえる。誰か、女子生徒と立ち話でもしているのか。
誰も見ていないのを良いことに、彼女は大きく欠伸をする。直後、
ドンッ
小さな悲鳴と、重い何かが倒れる音。
嫌な予感がした。
残りの階段を一気に駆け上がる。図書館の近くの廊下。
「……………ハーマイオニー？」
彼女の目に映るのは、先程まで元気に動いていたはずの親友が、話し相手と思わしき女子生徒と共に、倒れている姿だった。
「ハーマイオニー！ねえ、ハーマイオニー、ハーマイオニー！？」
目を見開いて石化したハーマイオニーの名を、蒼白な顔で何度も呼ぶ。反応は無い。ピクリとも動かない友を前に、座り込んだAの脳内は、どんどん現実味を失っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
☆りんりん♪(プロフ) - 鯉天さん» ありがとうございます！最近忙しさがヤバイですが、更新がんばります！ (2018年8月15日 0時) (
レス) id: bbc438c362 (このIDを非表示/違反報告)
鯉天(プロフ) - 前作も読みました！更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2018年8月14日 17時) (レス) id: 4ca258a6ba (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 賢者の石も読ませてもらいました。とても面白いです！続きがとても気になります。 (2016年9月7日 0時) (レス) id: f2e1a1e1a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：☆りんりん♪ | 作成日時：2016年9月6日 22時
