夢を元にした日本人がホグワーツで愉快に過ごす話～賢者の石篇～ (ページ10)

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校長先生とお話ページ10

「あっお礼言ってない」

魔法薬学があった日の夕方。出された課題をやっている最中、ふとAは思い出した。ダンブルドア先生に、イヤリングのお礼を言っていない、と。
ぶっちゃけ相手が勝手にくれたものだから言わなくても大して問題は無いのだけど、その辺りはさすが律儀な日本人。思い立ったら吉日とばかりに、彼女は足早に校長室へ行った。

デカい扉の前でノックすると、扉が開く。良いのか、そんな簡単に人を招き入れて。

「ようこそ、ミス・カザマ」
「こんばんは、ダンブルドア先生」

部屋の真ん中には、人の良い笑みを浮かべたおじいちゃん、ダンブルドア校長先生が座っていた。

「どうぞお座りなさい」

彼はAにソファを勧め、コーヒーとシュガーポットとミルクを出してくれた。実は紅茶が苦手な彼女にとっては有難い。そして遠慮なく砂糖とミルクで甘くしたコーヒーはおいしかった。

「あの、イヤリング、ありがとうございました。それにいろいろと同封してもらってたのも、すごく助かりました」
「役に立ててもらえたかな？」
「はい、特にイヤリングは、目で見る文字も翻訳してくれて、おかげで困らずに済んでます」

正直に答えると、ダンブルドア先生は温かく微笑んでうんうんと頷いた。

「(何か落ち着くな、この人といるのは)」

心がホッとするのを感じる。彼の持つ雰囲気がそうさせるのかもしれない。
とにもかくにも、彼女にとって、親以外で久しぶりに安心できる人物だった。

その後しばらく雑談をして、そろそろ夕食の時間。

「…ダンブルドア先生」
「？」

大広間へ行こうと立ち上がった彼女は思わず、本当に思わず、尋ねてしまった。

「また、来ても構いませんか？」

不安になったりしたとき、この安心感が欲しい、と思って。

「いつでもおいで。歓迎しよう」
「ありがとうございます！」

不躾な質問をしてしまった、と即反省した彼女を、柔らかな言葉が包んでくれる。ダンブルドア先生は、変わらず温かく微笑んでいた。
満面の笑みでお礼を言うと、Aは今度こそ退室した。

欠片もおいしくないはずの料理が、いつもと比べてほんのちょっと、おいしかった。