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優しく、どうしたと問いかけると
僅かに首を横に振る
言う気は、ねぇか
トリガーは、授業参観か？
でも、もうだいぶ前だし
恵も津美紀もちゃんと受けていたという言葉に
嘘はなかったと思う
じゃあ、なんだ
縁談、か？
恋でも、したか
だから言えないのか？
泣くばかりで話せないAの
相変わらず小さすぎる背中を
ゆっくりトントンと叩けば
次第に落ち着いて
そのまま眠りに落ちたのがわかった
少し体を離すと
泣いて腫れた目元が見えて
睫毛に涙の雫が絡まっていて
キラキラしているそれを
指で掬った
目尻に流れる涙も掬う
俺が、全部掬ってやりたいのに
泣くことなんてないようにしてやりたいのに
そんな余裕もなかった自分をぶん殴りたい
そっと枕にAを寝かせて
キッチンでタオルを冷やして
腕枕をして引き寄せながら
Aの目元に当てた
お前は、今度は何を抱えてる？
俺に、頼れよ
そこまで考えてハッとした
Aが今まで、自分から俺に頼ったことは
あっただろうか
随分前に、恵と津美紀に何かあった時の連絡先に
俺を追加してくれた時
すげえ嬉しくもあり、
驚いた
あれが多分、初めてAが
俺を頼る気になったとわかった時だった
それから、、
次は多分、あの時だ。
恵と津美紀の入学式
今まで気付かなかった。
あれは誘ったんじゃない。
Aは多分、入学式を知らなかった。
だから、俺を、頼ったんだ。
授業参観も、
学校に通ったことの無いAが
知るわけが無い。
だから、任務の間をぬって
わざわざそれを言いに
帰ってきたんだ
あの時の自分、まじで許さねぇ
俺はそのチャンスを、二度も
何も気づかず無下にした
七海が知ってたのは、七海に頼ったからなのか
じゃなきゃ、知るわけが無い
何で、そんなことにも気づかない
どうして最強で呪術師としては
崇められる俺が
お前の前で格好つかない
Aの前では、調子が狂ってばかりだな
昔から
出会った瞬間から
お前は、俺の五条悟としての威厳も仮面も
全部とっぱらっちまう
お前は、俺を、ポンコツにできる唯一のやつだよ
まじで
「ごめん、A。」
それでも
「好きだ」
眠るAの瞼にキスをして
抱き枕のようにAを閉じ込めて
息を吸い込んだ
Aの匂いに、こんなにも安心する
この温もりを手放すなんて
考えられねぇ
邪魔するもんは全部排除する
俺のギラギラする瞳も
Aを見ると、すっと和らいでしまう
そんな女を、手放すわけがないだろ
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作者名：りん | 作成日時：2021年7月19日 0時
