稀血 ページ42
よしできた!と薬を塗った足をしばってくれた。
「ありがとう」
『少し痛みは引いた?』
「うん……」
『良かったぁ』
千代さんは薬をしまうと何があったか聞いてきた。
思い出すと震えが止まらないけど、伝えなくちゃ。
「化け物に攫われて………く……く……喰われそうになった。そしたらどこからか別の化け物がきて、こ、殺し合いをし始めた…。誰が俺を……くっ……喰うかっ……て。そ……それで……、体から鼓が生えてる奴……、あいつが他の奴にやられた時、この鼓を落としたから叩いたら部屋が変わって……何とか今まで」
『そっかぁ。今までよく戦ったね!』
話してくれてありがとう。怖かったね、とまた優しく撫でてくれる手に安堵した。
『ほかに何か気になったことはなかった?』
「気になったこと…、そうだ!!そう…、俺のことマレチって呼ぶんだ」
『稀血……』
マレチってなんなんだろう?
『そう…、清くんは稀血なんだね…。私もね、同じなんだ』
「千代さんも?あの、稀血ってなんなんですか?」
『うん。稀血はね、珍しい血の持ち主のことなの』
「お姉ちゃん…」
悲しそうな声で、千代さんは話す。
『鬼は稀血を喰えば、普通の人を喰った時よりも力を得られる。だから稀血は他の人より優先的に狙われてしまう』
「そんな……」
『あ、そうだ。清くん、これを』
差し出されたのは、紫色の小さなお守りだった。
「これは?」
『藤の花のお守り。鬼は藤の花を嫌うから。
きっと清くんを守ってくれるよ』
「ありがとうございます」
また優しく微笑んでくれている気がした。
この人は信じられる。
きっと今まで辛い思いをしてきたんだろうに。
大切なお守りを俺に譲ってくれた。
これはずっと持ち歩こうと両手で大切に握りしめた。
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作者名:りんらん | 作成日時:2020年9月28日 16時