鼓の音 ページ38
指示された場所に行くと、一軒の大きな屋敷があった。
「血の匂いがするな…」
「えっ?何か匂いする?それより何か音しないか?あとやっぱり俺たち共同で仕事するのかな。千代ちゃんが一緒ならなんでもいいけど」
ね?と振り向くと、後ろにいたはずの千代ちゃんは木陰の方にいた。
『……ね、ねぇ、君たち』
子供だ。二人…。こんなところでどうしたんだろう。
かなり怯えた音がしている…
『ん〜…あっ!』
何か思いついたように、面をずらして、
しゃがんだまま、手を前に出した。
『じゃじゃーん!手乗り雀だよ〜?
可愛いでしょ〜』
にこーっと効果音がつくほど、笑顔を見せながら。
俺の雀を掌に乗せて子供たちに差し出す千代ちゃん。
可愛すぎる!!
雀より、君が可愛いよ!?わかる!?
雀…そこ代われよ。
ーーー
千代…
もうあんなに普通に話しかけられるようになって…
俺は一人感動していた。
それに可愛いよ、千代!
じゃじゃーんって何だよ!!
力が抜けたように地面に膝をつく二人に、千代が優しく問いかけた。
『何かあったの?そこは二人の家?』
「ちがう…、ちがう…。ばっ…化け物の家だ…。兄ちゃんが連れてかれた。夜道を歩いてたら、俺たちには目もくれないで兄ちゃんだけ…」
『お兄ちゃんだけ…、あの家の中に入っていったんだね』
「うん…うん…」
『二人で後をつけたんだね?えらいよ。頑張ったね』
「……うう。兄ちゃんの血の痕を辿ったんだ。怪我したから……」
!!怪我………
『大丈夫』
「俺たちが悪い奴を倒して、兄ちゃんを助ける」
「ほんと?ほんとに…?」
『うん、きっと…』
「千代ちゃん、炭治郎」
千代と一緒に涙を溜める二人をなだめていると善逸がまた音の話をした。
「ずっと聞こえる。鼓か?これ…」
「音?音なんて……」
ポン、ポン、ポン、ポンッ
聞こえた鼓の音。
それと同時に上の階から血だらけになった男の人が投げ出されてきた。
「!?」
『見ちゃダメ!』
ドシャっと地面に落ち、千代が咄嗟に子供たちの視界を隠す。
「大丈夫ですか!?」
その人の体を支えたけど、まもなく死んでしまった。
話を聞くとこの人はこの兄妹の兄ちゃんではないらしい。
何人も捕まっていたんだ。
行かないと!!
「千代!!善逸!!行こう」
『うん!』
千代はもちろん、というようにうなづいてくれたが、善逸は頑なに首を縦に振らない。
「……。そうか、わかった」
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作者名:りんらん | 作成日時:2020年9月28日 16時