任務完了 ページ22
そのそばでは和己さんが静かに涙を流していた。
『えっと…』
「和己さん、大丈夫ですか？」
「……婚約者を失って、大丈夫だと思うか」
『……』
この人も鬼に幸せを壊されてしまった。
「………。和己さん、失っても失っても生きていくしかないです。どんなに打ちのめされようと」
炭治郎…
「お前に、お前たちに何がわかるんだ！！お前たちみたいな子供に！！」
和己さんが炭治郎の羽織を掴みながら訴える。
それを優しく振り解きながら、炭治郎は悲しい笑みを浮かべた。
泣いてしまいそうだけど、泣いている暇なんてないんだ。
「俺たちはもう行きます。これを。里子さんの持ち物があるといいのですが…」
いつのまに…
炭治郎が和己さんに差し出したのは、あの鬼が持っていた蒐集品だった。
和己さんはそれを大事そうに握りしめた。
ーーー初任務完了だ。
「行こうか」
『うん』
それから一つお辞儀をして、
私を気を遣ってくれたのか、炭治郎が差し出してくれた手を握って歩き出した。
「すまない！！酷いことを言った！！どうか許してくれ。すまなかった……っ」
後ろから聞こえたのは悲しそうで辛そうな謝罪の声だった。
二人でそれに手を振って、またその手を繋いでこの町を後にした。
私たちだけじゃない。
どれだけの人を殺し、痛めつけ、苦しめた。
鬼舞辻無惨
私はお前を絶対に許さない。
炭治郎もきっと同じことを思ってる。
だって怒りの気がさっきからすごいし、
ていうか、手…手痛いんですけど！！
怒りで拳握りしめたい気持ちは分かるけど！！
『炭治郎？手…痛い』
「あぁっ、ごめん」
『大丈夫大丈夫』
町を出て少し歩くと、鎹鴉が飛んできた。
「カァァ」
『月丸〜』
すりすりと私の頬に顔を寄せてきた。
人懐こくて、少し甘えん坊だ。
「え、名前付けたのか？」
『ううん、この子の名前なんだって。月丸って言うの。この人が炭治郎だよ〜』
「カァァ、ヨロシク頼ム。炭治郎ォ」
「ああ、よろしくな」
【コソコソ噂話】
千代さんは、基本血を流すほどの怪我を負わないと凍血を自在に操れません。
そのため、自身で傷を作ろうとしましたが、炭治郎と鱗滝に全力で止められたので
なんとか特訓の末、凍血による技の追加効果分の威力は落ちますが、少しの冷気だけなら操れるようになったらしいですよ？
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作者名：りんらん | 作成日時：2020年9月28日 16時
