16話 ページ17
｢パパ〜、今日はね学校が休みだからね一日中パパと一緒にいられるよ！でねでね！A、考えてみたんだけど、今日はねパパにA特製のお粥を作ろうと思ったんだ〜！だからねついさっき治に手伝って貰ってね、作ってきたんだけど…食べてくれる？｣
横たわっている首領の隣で、お盆を手に今朝作ったお粥の入ったお碗を持ったA嬢は楽しそうに話しかけている。
半年、其れはあっという間に過ぎていった。僕は以前、情緒不安定な状態でA嬢の部屋で眠った時、変わった夢を見て以来、また何もなく過ごしているが、首領の体調が急変した。
首領は病を患い、脚で歩けなくなった。車椅子生活を数ヶ月、そして今月に入っては動けなくなる状態まで悪化した。
彼の生涯も、あと僅かと云っていい。
A嬢は以前よりも首領の側に居るようになった。今さっき、A嬢は首領に学校が休みだと嘘をついた。父の死を、感ずいたのか最近は学校を休むようになった。
僕には家族というものがよく分からない。人の死を、悲しんだことが無いからか、そんな気持ちを感じたことが無いのだ
首領もよくA嬢を呼ぶようになった。自分の死が近いことを悟って、何時も以上に傍に居らせた。自分の娘と、最期まで過ごしたいと。マフィアの、あの首領が娘には見せる人間らしい一面、多分僕が他人の中で一番その場面をよく見たと思う
あんな冷酷で残虐な人が、一人の娘には父という姿を見せている。其の少女の存在は、首領にとって宝物と云うべき存在という訳だ
｢治ー｣
｢はい｣
｢リンタロウ呼んできてくれる？お昼ご飯食べ終えたら診察するからさ｣
｢分かりました。A嬢、お昼はどうしますか？｣
｢んー、後ででいいや！｣
じゃ、宜しくね！相変わらず愛らしい笑顔で手を振るA嬢に頭を下げ、部屋を出た。
▪ ▪ ▪
医務室で森さんに昼の首領の診察を頼むと、彼は不敵に笑って見せた。僕がどうしたのかと尋ねると、森さんは何も無いと云って首領室へと向かっていった。僕も続いて行くけれど、彼がどうして笑ったのか。
｢Aくん、首領は？｣
｢今ご飯食べ終えたところだよっ｣
｢分かった。今から診察するから、Aくんは太宰君と一緒にご飯を食べておいで｣
｢はーい！んじゃ、行こっ治！｣
｢…はい｣
あの森さんのことだ。
きっと、"彼の人"は長くない。終わり始めているその先に、この小さな少女は何処まで受け入れられるのだろうか
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竹薮 - 面白いです。個人的に夢主が怖くて好きです。更新頑張って下さい。応援してます！ (2018年2月17日 13時) (
レス) id: 9078c77c1b (このIDを非表示/違反報告)
黒桜姫(プロフ) - 七葉さん» 有難うございます。早く原作突入出来るように頑張りますね (2017年12月6日 23時) (レス) id: 5de5d502f1 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - 続きがとても気になります!楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2017年12月5日 21時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒桜姫 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月5日 2時
