鬼殺隊三人衆 ページ8
大方屋敷内を見て回った後、めそめそと泣きながら一室を出てくる善逸さんと鉢合わせした。
まぁ何とも情けない顔に身を引くも、名前を叫ばれながら抱きつかれては、無理やり離れる事は叶わない。
仕方なく彼の羽織の後ろを引っ張ると、涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃになった彼を見ながらどうしたんですかと紙に綴る。
「治療が痛かったんだよぉ!!すごい、もうすごい痛い!今ももう肩ある!?って感じだしさ!?Aちゃん癒して!俺を癒してぇぇ!!」
『癒してあげたいのは山々ですけど、まずはその顔どうにかしましょうか』
わんわんと泣き叫んでいる(であろう)善逸さんを窘め、取り敢えず彼の寝室へと足を運ぶ。
すると、部屋の中には既に先客がいた。
こちらを振り向いたのは、額に特徴的な痣のある赤い髪の男の子。
そして、猪の皮を被った──人間…?獣…?がベッドの上に腰掛けている。
「お帰り、善逸」
赤髪の彼が弾けんばかりの笑顔でそう言うと、私の手を握っていた善逸さんの手が離れる。
そして飛びかかるかの様に彼へ抱きつくと、やはり泣き始めた。
猪も何か言っているのだろうが、口が分からないから何を言っているか予想もつかない。
「あれ?その子は?」
私の方へ向けられた目を受け、これから先何度も使うことになるだろう自己紹介を書いた紙を懐から取り出す。
『音榁Aです。よろしくお願いします』
「俺は竈門炭治郎。そしてこっちが、」
言いかけて、猪の彼…?がベッドの上に立つ。
何か言っている様だが、勿論その皮を外してくれないと私には何を言っているか分からない。
どうしよう。取り敢えず分かったフリでもした方が良いのだろうか。
その場で固まっていると、漸く泣き止んだ善逸さんが猪を指さして言う。
「嘴平伊之助。乱暴だからAちゃんはこういうのと一緒にいない方がいいよ」
余計な一言で反感を買ったのだろう。胸ぐらを掴まれてる善逸さんに慌てて駆け寄った。
どうやら、伊之助さんは獣の如く血の気が多い様だ。
おろおろしながらも、善逸さんを彼の手から引き離し終わると、炭治郎さんが不思議そうに私を見ていた。
態度的にも、なかなかに豪語していた様子。
それが聞こえなかったのを不思議に思うのは当然の事だった。
一番大切な事なのに、忘れていた。
私は慌てて自己紹介の文の最後に書き忘れていたものを付け足し、再び彼らへ見せた。
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作者名:*yuki | 作成日時:2020年4月22日 14時