第五十五章 ページ5
花火の大きな音の余韻が鼓膜に残っている。
辺りが静かなのもあって余計に不思議な感覚だ。
でも大通りに戻ってみればまだまだ賑やか。
いつも以上に楽しそうな人々の顔がきらきらと眩しいほどのライトに照らされている。騒いでいるけどその声は耳障りには感じなかった。
「今日はありがとな」
こんな騒がしい中でもしっかり聞き取れた彼の声。
お礼なんて私がするべきなのに。
言い返そうとした私の目の前には薄ピンク色のふわふわしたもの。
「疲れた時は甘いもんって言うやろ?」
なんて言って笑う。どうしても私にそれを言わせたくないらしい。
そういうところが、なんか慣れてるみたいで悔しくて、ズルく思う。
それに加えて、さりげなく片手を繋いでエスコートしてくれるんだから、これは女の子簡単に落ちちゃうな、なんて思ったり。凄い、誰にも当たらない。
『……ホント、ズルい』
一口含んだわたあめが、やけに甘く広がった。
・
「んで、なんで勝手に外出したん?」
「あ、えっとぉ……」
『ご、ごめんなさい……』
城に戻った私達を迎えてくれたのは不機嫌なトントン。
前にも同じようなことがあった気がする。
この時初めて知ったのだが、幹部は余程の用事がない限り城下町には言ってはいけないらしい。
まぁ、国のお偉いさんが不用心に街中歩くわけないもんね、普通。
大先生は結構女の子探しとかで勝手に行ってるみたいだけど。
『あの、私が行きたいって言ったからで……大先生は……その』
「なんで大先生なん?」
『……え?』
「……」
「トンち、嫉妬は良くないで〜?」
大先生の軽い言葉にトントンの機嫌がさらに悪くなった。
仕事疲れや寝不足によるストレス……なのかな。
「大先生、明日朝俺のとこ来い」
眼鏡のレンズの奥で細められた目。
口から出たその声はとても低くて、怖かった。
大先生もそれを感じっとったのか顔をひきつらせている。
と、トントンが右耳、恐らくインカムを抑えた。
そして小さく相槌を返し、了解と呟いて大先生に視線を向ける。
「グルッペンが呼んどる。総統室、すぐ来いって」
「……あ、マジか。わかったわ」
呼ばれた理由に心当たりがあるのか、大先生は一言呟いてこの場を去った。
残された二人。何というか気まずい。
そもそも怒られる理由がいまいちわからない。
仕事は終わらせてる。確かに黙って行ったけど……。
トントンの目を見れないまま続く沈黙。
「見えない所に行くなや」
彼はそう呟いた。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
