第八十一章 ページ31
No side
「なんですって……?」
先程までとは一変して低くなった女の声に、ゾム達はマズイと直感する。
彼らはこれを一度経験したことがあった。
それは同じパーティーにて鬱が女の誘いを断り、他の女と話していた時。
女はディナー用のナイフで相手の女をズタズタに傷付けた。
もしAがあの時の相手の女と同じように傷付けられたら……。
ここにいる幹部も怒るだろうが、何より、ここにいないトップの二人が決して許さないだろう。
最悪が最悪を呼ぶ前に止めないと。
そう思う彼らだが、下手に話しかければそれこそ女を暴走させかねない。
取り押さえるべきかとゾムが判断した時、女はおもむろに持っていたグラスを柱に叩きつけた。
派手な音を立ててグラスは割れる。……凶器にもなりえる形になって。
この騒動に誰か気付いてくれるかと期待を抱いたが、タイミング悪く音楽演奏の途中で音はほとんど掻き消されてしまった。
「わたくしの話が嘘だって言うんですの……?」
『ええ。信憑性に欠けるものでした』
「これはルンズェ皇帝から聞いた話なのよ!それを否定するなんてどれだけ往生際が悪いの!?」
『私の記憶にはありません。ガダラ村は両国間での戦争に巻き込まれて消滅しました。その争いに村が、私が関わっていることはあり得ません』
「この女!!」
女がグラスを持つ手をAへと突き出す。
振り上げなかったのは後ろに居るゾムに止められることを悟ったからか。
そしてその判断は正しく、ゾムが女の手を掴んだのは既に遅い時。
Aの頬に赤い線が一筋入り、そこから血が流れていた。
「お前……!!」
「イナーラちゃん」
ゾム掴んだ女の腕に力を込め始めた時、鬱が今日この場で初めてその女の名前を呼ぶ。
その女、イナーラはほぼ反射的に鬱の方を振り向く。
鬱は胸元に忍ばせていたイヤリングをイナーラに差し出した。
それは会場に向かう前に取ってきたイナーラへの贈り物。
こうして何かをプレゼントしないと彼女の機嫌が良くならないのを、鬱は誰よりも知っていた。
イナーラは鬱の差し出す物を瞬時に理解し、今までの事が無かったかのように明るい笑顔を浮かべて鬱へと駆け寄る。
その時に落としたグラスが床の上で粉々に砕けた。
「まあ!鬱さん、これをわたくしに!?嬉しいですわ!!」
「ははは、気に入ってくれたんなら嬉しいよ」
この場は鬱の行動のお蔭で何とか収まる。
だが、その後誰もAにあの話の真偽を聞くことは出来なかった。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
