第五十四章 ページ4
部屋に駆け込んだ私は机の上に積まれたそれらの中から今日中の物だけを選別する。
こうして見ると改めて1日の仕事量の多さを感じた。
椅子に腰掛け、ペンを持つ。
そこからはただひたすら作業を続けた。
途中軽い昼食を取る以外はほとんど休憩無しでいつも以上にペンを走らせる。
それでも、時間は等しく過ぎていく。
・
時刻は手元の時計で20時30分を示す。
その時、ようやく私は最後の一枚に手を伸ばした。
本来ならば既に終わっているのに。
そんな愚痴を寸でのところで飲み込む。
今書き進めている物は最初に分けた物とは別の物。
事を説明すると、今日に限ってトントンが追加の資料を持ってきたのだ。
しかも今日中の物。
そりゃあトントンだけじゃキツイし補佐だからしょうがないけど……なぁ。
『お……わった‼』
さらっとミスが無いかを確認して、よし。
持っていくのは後にしよう。
確か花火は9時から……ヤバイ間に合わない。
椅子から立ち上がり、部屋を飛び出す。
……と、ドアに何かが当たった。小さな悲鳴も聞こえる。
「痛って、びっくりしたわ……」
『だ、大先生!?ごめん‼』
「いやええよ、こんなとこあった俺も俺やし」
『いつから待ってたの?』
「さっきやで。ささ、花火始まる前に行こか」
『あ、浴衣……は時間ないね、ごめん』
私の2度目の謝罪にも気にしてないように言葉を返す。
ここに来たのもさっきって言ったけど大先生の額にはほんの少しだけ汗があった。日没とは言え蒸し暑い夏の夜。長い間待ってくれてたんだろうな……。
それを言ってこない辺り流石女慣れしている。
素直に彼の優しさかもしれないけど。
私達は足早に城下町へと向かった。
・
大通りには様々な屋台が立ち並んでいた。
香ばしいソースの匂いが鼻をかすめる。
ほんの少し興味を引かれたが、今は花火だ。
城からでも見えるみたいだけど、遠いからオススメしないらしい。
折角見るのだから最高の場所から、と大先生に連れてこられたのは岬。
静かに波打つ水の音が心地よく耳に響く。
周りには数人しかいない。いわゆる穴場ってやつなのかな。
「何とか間に合ったな〜、流石俺」
大先生のその言葉に素直に頷ける程、今は感謝しかない。
遅くなったのに文句の一つも言わず楽しませようとしてくれる。
言い争ってばっかりだけどなんだかんだみんなが大先生のことを嫌いになれないのはきっとこういうところがあるから。
私のお礼の言葉は咲き誇った花火の音に掻き消された。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
