第七十六章 ページ26
『今年もあるのかぁ……』
トンッと資料をまとめながらぼやく
返事をしてくれるひとはいないが、いたら愚痴ってしまいそうなのでいなくてよかったと思える。
私がここに来てから一年が経った。
それはつまり、またあのパーティーがあるという事。
この前さり気なくグルッペンにその話を出した時私も参加させるみたいなこと言ってたし、それが変更されることはないだろうから諦めるしかない。
一つ幸いがあるとすれば、エミさんのマナー指導が確認程度であるという事か。
去年のあれは厳しかったもんなぁ。
『やだなぁ』
パーティーは三日後。
主催国は去年より近い国で行われるらしい。移動が少し楽。
で、衣装……なんだけど、どうやらグルッペンと大先生で用意するらしい。
個人的にオスマンやしんぺい神に選んでもらいたかった。
センスあるし、何より安全だ。
この言い方だとあの二人が危険とか思われそうだけど、実際そうなんだよね。
あまりにあれだったら自分で用意しよう……。
『……』
やだな。
行きたくないな。
前みたいに上手くいくかな。
……怖いな。
『はぁ……』
「そんなに行きたくないん?」
『そりゃあ、だって……』
言いかけて、気付く。
辺りを見回しても誰もいない。
でも、声の主を知っているから、普通ならあり得ない天井を確認する。
……彼はそこにいた。
やっぱり普通にドアをノックして来てくれない。
「で、なんでなん?」
『……何でもないよ。ただ知らない人が居るところに行きたくないだけ』
「まぁなー、A、いろんな男に捕まりそうやし、俺も嫌や」
『……どういう意味?』
「知らんでええよ。ま、あっちではまた俺が近くにおったるし大丈夫や」
そう言ってゾムは私のベッドに腰掛けた。
ゾムはどうして私の傍にいてくれるんだろう。
命令だから、心配だから?
……きっと、優しいから。
でも、そうだとしたら。
いつか私の傍にいてくれなくなっちゃうな。
『ねぇ、ゾム』
「なんや?」
資料を机に置いて、私は彼の名前を呼び……そして彼に抱きついた。
「え、え!?Aどうしたん!?」
ゾムは後ろに倒れずに受け止めてくれた。
胸元に顔をうずくめると、他の誰とも違う、ゾムの匂い。
それに安心して……でもやっぱりあの気持ちは消えなくて。
私はぎゅっと彼の服を掴んだ。
『独りに、しないでね』
このさき何があっても、お願い、見捨てないで。
「当たり前やろ」
彼は呆れたようにそう言った。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見(自宅パソコン)さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます!! (2017年9月29日 21時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見(自宅パソコン) - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます!!更新のほう、無理しない程度に頑張ってください!!応援してます!! (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年9月6日 21時