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第六十九章 ページ19

ロボロside


『ちょっとだけ、私の話をしてもいい?』


彼女がぼそりと呟いた。

ここまで俺の話を聞いてくれていたのだから否定するわけがない。
肯定を返すと、Aちゃんは手摺に背を預けて語りだす。


『とってもありがちなお話。私、村でいじめられたんだ……優しく言うとね。理由、なんだと思う?』

「……」

『察しついてると思うけど、この瞳。みんなと違ったから』


そう言って俯く。風が街側から吹いているので髪が彼女の顔を隠している。
瞳の話をしているときに瞳を見られたくないだろうし、当然の行動か。


『両親は物心つく前からいなかった。思い出なんて、ひとつもない』


じゃあ両親を恨んでいるのだろうか。無責任に自分を捨てた両親を。
そう尋ねると彼女は顔を上げて少し笑った。


『ふふふ、恨んでなんてないよ』

「……なんで?」

『捨てた、なんてただの憶測。本当は私の為だったかもしれない。あの村に預けるのが最善策だったのかもしれない。真実を何も知らないのに勝手に恨むのは、身勝手な行為だよ』


最善策でこうなったとしても。
そう言葉を重ねる彼女から嘘は感じなかった。
心の底からそう思っているんだろう。


『たとえ本当に私を捨てたんだとしても、私は両親が今も元気に過ごしていることを願ってる』


決めつけは良くない。
正義ぶってそんなことを言う奴がいるが、彼女こそ本当にその精神だ。
そのまっすぐなところが彼女の良いところで、人を魅了する要素なのだろう。

彼女はにぱっと笑って聞いてくれてありがとうと言った。
その綺麗な笑顔に鼓動が速まったのを感じる。
ああもう、久しぶりだから余計に悪い。
こういう時にだけ顔が隠れていてよかったと思えた。



Aちゃんが完全に話を終わらせたせいで俺は尋ね損ねたことがある。
彼女の村を巻き込んだ戦争を起こした二つの国。
その二つの国との接点。
情報を調べていくうちに彼女は何かしらの関りを持っていることがわかった。
それが何なのかは、幾ら調べてもわからない。

でも、今の話を聞いた後にそれを聞けるほど俺の神経は図太くなかった。
今すぐに欲しい情報じゃない。
彼女はこれから先もずっと俺たちと共にいる。
焦らなくていい。
そんな自分への慰めの言葉、言い訳の言葉が溢れていく。


ちらりを彼女を窺うと、俺を見ていて。


『私、ロボロの顔好きだよ』

「〜っ」


本当に人を惑わす。
計算している悪女ならどれだけ嫌えることか……。

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リノ(プロフ) - 綾波夜見(自宅パソコン)さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます!! (2017年9月29日 21時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見(自宅パソコン) - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます!!更新のほう、無理しない程度に頑張ってください!!応援してます!! (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リノ | 作成日時:2017年9月6日 21時

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