第六十三章 ページ13
滅多に聞かないグルッペンの慌てた声。
それはトントンが走ったことと似たようなもの。
「今寝てんやから静かにしろや!」
少し遅れてきたトントンがグルッペンの頭を軽く叩く。
注意しているが、そのトントンの声も大概だ。
つまり2人とも余裕がないのだろう。
俺は椅子から立ち上がり後ろに退く。
空いた椅子にはグルッペンが座った。
「A、何か欲しいものはあるか?」
相当な過保護。傍から見れば甘やかしすぎだとか思われるんだろう。
でも、非戦闘員であり、女性であるAの扱いがわからないのだ。
使用人とも国民とも違う。彼女の扱いが。
戦闘、戦争。血にまみれた俺たちにはいささか純粋過ぎた。
それはいろんな意味で俺たちの今までをかき乱す。
トントンは笑うことが多くなった。
グルッペンは戦争以外のことにも関心を持つようになった。
俺は毎日を充実していると思えるようになった。
俺はそれを否定しないし、拒絶もしない。
自分たちが良い方に変われたと思えるから。
彼女にとっても、今の方が楽しい日々だって思ってもらえたら、そしたらこれは続いてくれるのだろうか。
互いに望み合えば、続いてくれるのだろうか。
「もう少しでしんぺい神が戻ってくるからな」
たとえ、今の関係が変わってしまったとしても。
彼女に、何にも代えがたい存在ができたとしても。
……みんなで居ることを望んでさえくれるのなら。
大切なものを見るような目をする彼を後ろから眺めつつ、俺はどこか不安になった心を隠すようにフードを被った。
こうしていると、落ち着く。
その後、グルッペンに相当急がされたであろうしんぺい神が到着。
しんぺい神は丁度他国に行く準備の為に城下町に行っており、連絡が少し遅くなっていたらしい。
俺個人としては信頼あるしんぺい神に任せることに一切心配は無いのだが、しんぺい神の元で学んでいる助手達に任せても良いと思えた。
そうしなかった彼の独占欲の強さが窺える。
Aの熱は最初よりも随分と高くなっていたが、治療後は無事落ち着いた。
二日後には今まで通りに過ごせるだろうとのこと。
彼女が休んでいる間の仕事は俺やシッマ、シャオロンに一任された。
俺達三人がおよそ一日かけてやっと終わらせられた仕事を彼女は一人で、しかも一日もかけずに終わらせられると知って、改めて彼女の大変さを実感した。
……あとトントン。
彼女と話せなかった二日間がようやく終わった。
明日からはまた一緒に笑える。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
