第六章 ページ6
それはよく油がさされているようで、ほとんど音を立てずに開いた。
こんな重そうな扉なのに不思議だ。
総統さんが私よりも数歩先を歩き、部屋の中へと入って行った。
私もついていこうとゆっくり足を進めようとして。
「遅いやんけグル氏!!」
「そおだよ、待たせんなよぉ」
中から聞こえた大きな声に委縮して逆に後退りしてしまった。
軍医さんがごめんね、大丈夫、と肩を軽く撫でてくれた。
手のひらの温もりで怖さが少し収まる。
っというか。
本当に幹部の人と総統さんって砕けた感じなんだ……。
「入ってこい」
部屋の中から総統さんが私に視線を向けた。
ちなみに私からは部屋の中は総統さんしか見えない。
横に広い構造になっているみたいだ。
私は部屋の中に……入ろうとするが足が動いてくれない。
いきなり軍の偉い人に会わされて、気付けば軍に入ることになって、幹部の人たちが集まる場所に連れていかれて……。
私の頭はもうキャパオーバーだ。
全然ついていけないよ。
……私を追っていた軍はこの人たちじゃない。
わかっていても、確信はないし、もうあんな思いなんて味わいたくない。
怖い。
私はここで何を望まれているの。
もしも私が失態をしてしまったら……。
どうなっちゃうの?
『…………ッ』
「大丈夫」
二度目の感覚。
軍医さんが私の両肩を軽く掴んだ。
ハッとして、自分の息が止まっていることに気付く。
小さく息を吸って、軍医さんを見上げる。
軍医さんは相変わらずの優しい柔らかい笑顔。
……そうだよね。
この人たちは恩人だ。
私が疑っていい人たちじゃない。
『…………』
軍医さんに大丈夫ですという意味を込めて小さく頷く。
それをわかってくれたようでそっと離してくれた。
この人はとっても察しがいい。
私はまだ少し震える足を必死に前へと出す。
部屋に入ると複数の視線が集まったのが見なくてもわかる。
総統さんのお隣に並んで行き場のない視線を下に向けた。
服の裾をぎゅっと掴む。
「新しく仲間になる」
仲間。
初めて言われた言葉に泣きそうになりながら、そういえば名前を名乗っていなかったな、と総統さんの言葉に続けて声を発する。
『……A、です。よろしくお願いします……!』
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時